研究課題/領域番号 |
18K06605
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研究機関 | 埼玉工業大学 |
研究代表者 |
長谷部 靖 埼玉工業大学, 工学部, 教授 (20212144)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオセンサ |
研究実績の概要 |
高齢化社会が進み生活習慣病の発症リスクも高まっている今日、自分の健康を自身で管理するセルフケアの観点から、身体装着型(ウェアラブル)生体情報計測デバイスの開発が期待されている。本研究では、汗に含まれる代謝物(乳酸、グルコース)を、非侵襲的かつ連続的に日常生活の中で測定できるウェアラブルバイオセンサを開発することを最終目的としている。 本研究のバイセンサの測定原理は、酵素型バイオ燃料電池を応用した自己駆動式のセンサである。本年度(初年度)は、柔軟性が高く任意の形状・サイズに容易に加工でき軽量な炭素繊維をバイオセンサの電極として利用し、汗中の乳酸やグルコースを酸化するバイオアノード用の4種類の酵素、および汗中の酸素を水に還元するバイオカソード用の2種類の酵素を、長期間安定に炭素繊維に固定化するためのリガンド安定化法を確立することを目的とした。 バイオアノード用の2種の酵素、バイオカソード用の1種の酵素で、酵素を安定化させる有効なリガンドを見出すことができた。これらの組み合わせの中で最も有効な3種の組み合わせにおいて、分光学的手法により、結合定数、結合の熱力学パラメータを算出し、リガンド結合に伴う酵素の構造の変化を追跡した。さらに、ドッキングシミュレーションにより、リガンド結合部位を推定し、結合相互作用の解析を行った。 次年度は、これらのリガンド安定化酵素を炭素繊維に固定化して、その触媒活性を電気化学的手法により測定・評価し、長期間安定に作動させるための各種条件を最適化する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
バイオアノード用に探索した酵素4種のうち、2種については、安定化効果を示すリガンドを数種類同定することができ、概ね予定通りの解析を行うことができた。また、バイオカソード用に探索した酵素2種のうち、1種の酵素についても、安定化効果を示すリガンドを数種類同定でき、概ね予定通り解析が進んだ。 しかし、当初予定していた6種の酵素のうち、バイオアノード用の2種および、バイオカソード用の1種については、起源の異なる数種類の酵素でスクリーニングを行ったが、有意な安定化効果を示すリガンドを見い出せていない。
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今後の研究の推進方策 |
リガンドによる安定化効果が認められたバイオアノード用の酵素2種、バイオカソード用の酵素1種を炭素繊維に固定化し、その触媒活性を電気化学的手法により測定・評価し、長期間安定に作動させるための諸条件を最適化する。 上記と並行して、前年度、安定化効果を示すリガンドを見いだせなかったバイオアノード用の酵素2種および、バイオカソード用の酵素1種に関して、安定化を誘導するリガンドのスクリーニングを続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、購入を予定していた備品が、共同研究先から借用できたため、本年度は2年目に購入を予定していた電気化学アナライザーを前倒しで購入した。次年度は、次年度交付額に今年度の差額をプラスして、リガンド安定化酵素の単離・精製に必要な凍結乾燥装置一式を購入する予定である。
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