自身の健康状態を自分で管理するデジタルヘルスケアの観点から、身体装着型(ウェアラブル)生体情報計測デバイスの開発が期待されている。本研究では、酵素型バイオ燃料電池の原理に基づき、汗の中の乳酸やグルコース濃度に依存して発電量が変化する自己駆動式(自己発電型)バイオセンサの開発を目的とした。 バイオアノード(燃料極)には、グルコースや乳酸の酸化反応を触媒するグルコースオキシダーゼ(GOD)、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、乳酸オキシダーゼ(LOD)固定化カーボンフェルト(CF)を用いた。バイオカソードには分子状酸素を水に還元する反応を触媒するビリルビンオキシダーゼ(BOD)、および過酸化水素を水に還元する反応を触媒する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)固定化CFを用いた。 酵素をCFに固定化する際、CF表面での酵素分子の変性を抑え、高い活性を保持した状態で酵素を固定化する有効な方法を見出すことができた。また、直接電子移動(DET)型触媒反応に有利な配向を誘導する固定化法を見出すことができた。 LODとHRPを同時に固定化したCFをバイオカソードとして利用できることが明らかとなり、LOD固定化CFアノードと、LOD/HRP固定化CFカソードを組み合わせた乳酸電池を構築した。この酵素型バイオ燃料電池の原理を応用し、乳酸濃度0.01mM~1mMの範囲で濃度に依存して発電量が変化する自己駆動式の乳酸センサを開発した。 今後は、身体装着用のフレキシブルな電極を利用して、モバイル型ポテンショスタットおよびスマートフォン解析アプリと組み合わせることで、より実用的なデジタルヘルスケアデバイスの開発も可能であると考えられる。
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