研究課題
B型肝炎ウイルス(HBV)が肝細胞に特異的に侵入する分子機構、およびHBVが宿主の肝細胞内で増殖する分子機構を構造生物学的に明らかにすることにより、HBVの肝細胞への侵入や宿主細胞内での増殖の阻害という新たな作用点を持つ画期的抗HBV薬を創製することを目指している。前年度までに、大腸菌抽出液由来の無細胞合成系タンパク質合成系の反応液に脂質と界面活性剤を加え、透析しながらNTCPを合成することで、脂質二重膜にNTCPを埋め込むことに成功した。沈殿画分として得たNTCPを含む膜成分に超音波破砕を行うことで、遠心上清にNTCPリポソームを調製する方法を確立し、preS1との結合活性を共沈降実験により検出することに成功した。そこで本年度は、相互作用の定量的な解析に向けて、等温滴定型カロリメトリー(ITC)や溶液NMR法を用いた解析を試みた。しかし、調製できたNTCPリポソームの濃度が低かったため、ITCにおける熱量変化やNMRにおける残基特異的なスペクトル変化を検出することはできなかった。現在、NTCPリポソームを高濃度で調製する方法を検討している。高濃度のNTCPを調製する方法の検討の一環として、コムギ胚芽由来の無細胞合成系を用いたNTCP合成も試みた。その結果、プレリミナリーな検討であるが、大腸菌抽出液を用いた場合よりも高濃度のNTCPリポソームを得られることが示唆された。コムギ胚芽由来の無細胞合成系を用いて調製したNTCPリポソームについては、まだpreS1結合活性を確認していないが、引き続きpreS1結合活性、胆汁酸輸送活性などの性状解析を進め、立体構造解析に用いるサンプルを目指して調製を進めていく予定である。
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BMC Molecular and Cell Biology
巻: 22 ページ: -
10.1186/s12860-020-00337-3