研究課題/領域番号 |
18K06611
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
山本 浩充 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (30275094)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / 高分子ナノ粒子 / 高分子ミセル / デコイ核酸 |
研究実績の概要 |
潰瘍性大腸炎とは、大腸粘膜に炎症が起こり、潰瘍ができる病気である。腸において炎症が起こるため、下痢や粘血便、発熱や体重減少などの症状があらわれ、患者の生活の質を著しく低下させてしまう疾患で、自己免疫異常がその要因の一つとされている。病状は、寛解期と活動期を繰り返し、長期にわたって、本疾患治療を行わなければならない。潰瘍性大腸炎の治療は、活動期に行われる寛解導入療法と寛解期に行われる寛解維持療法があり、異なった治療目的で実施されるのが特徴であるまた、従来の薬物治療法では、重篤な副作用の発現や症状の再発が問題となっている。このため、高い安全性と優れた治療効果を持つ画期的な医療薬の開発が求められている。本申請研究では、潰瘍性大腸炎の治癒に有効な「経口投与型ナノ粒子DDS製剤」の開発を目的としている。 本年度は、昨年度に引き続き、ナノ粒子の腸管内分布挙動を明らかにすると共に、ナノ粒子へのデコイ核酸(DN)のナノ粒子への封入について検討した。高分子ナノ粒子として、PLGAナノ粒子、高分子ミセルとしてソルプラス粒子を用い、それぞれをキトサンで修飾した。ソルプラス粒子は、PLGAナノ粒子に比べて臓器への送達量の増大が観察された。また、 潰瘍性大腸炎も出るラットは、Normal群のラットに比べ、腸管の蠕動運動が遅延しているため、粒子経口投与後14時間経過した大腸でもナノ粒子が存在していることが観察された。DNのPLGAナノ粒子への封入に関しては、DN単独では検出限界以下の封入率であった。これに対し、カチオン性脂質とDNの複合体を形成させることで封入率は向上した。この傾向は高分子ミセルにおいても確認された。また、併せてCaco2細胞を用いたin vitro評価系を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は昨年度に引き続き、粒子径の異なる高分子ナノ粒子と高分子ミセルの消化管内挙動をより詳細に明らかにするとともに、キトサン修飾や潰瘍性大腸炎を引き起こしたモデルマウスと正常マウスでのナノ粒子の挙動変化についても明らかにすることができた。デコイ核酸を高分子ナノ粒子、高分子ミセルに封入する方法の確立もできた。さらに、Caco2細胞を用いたin vitro評価系を確立したことで、細胞レベルでのデコイ核酸封入ナノ粒子の効果を検証することができるようになったことから、おおむね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、デコイ核酸を封入したナノ粒子及び高分子ミセルを用いて、in vitroでの抗炎症作用の評価を進めていく。また、これまで実績のある抗アレルギー薬を封入したナノ粒子の組み合わせなどとも組み合わせたスクリーニングも併せて実施する。これら検討で得られた知見に基づき、潰瘍性大腸炎モデルマウスへの効能評価につなげていきたい。
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