研究課題/領域番号 |
18K06612
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
武上 茂彦 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (70298686)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脂質ナノ粒子 / イクオリン / グルタチオン / γ-グルタミルトランスフェラーゼ / 生物発光 |
研究実績の概要 |
本申請課題は、革新的な酵素アッセイシステムを構築するために、粒子の表面を酵素-基質の特異的反応の場として提供し、感度と特異性に優れた新規な脂質ナノ粒子発光デバイス(LNPLD)を開発することを目的としている。初年度(平成30年度)は、グルタチオン(GSH)をモデル基質として選び、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GT)アッセイが可能なLNPLDの開発をおこなった。今年度は、1)LNPLD懸濁液中でのイクオリン安定化の検討、2)LNPLD表面へのGSH修飾の検討、3)GSHを修飾したLNPLD(GSH-LNPLD)に対するγ-GTの応答性の検討、の3点をおこなった。1)について、LNPLDの発光源はイクオリンを利用している。GSHをLNPLDに修飾している間もイクオリンが失活しないための溶媒の検討をおこなった。種々の条件を検討した結果、2 mM EDTA、0.1%ウシ血清アルブミンを含むHepes buffer(pH 7.4)中ではLNPLDのイクオリンの発光は3日間安定して観測された。2)について、LNPLDの構成脂質のカルボキシ基とGSHのアミノ基を縮合試薬のNHS/EDCを用いてアミド結合させ、GSH-LNPLDを調製した。GSH-LNPLDにおいてもイクオリンの発光は観測されたことから、このGSH-LNPLDをγ-GTアッセイに用いることとした。3)について、GSH-LNPLDの対するγ-GTの応答性について実験をおこなった。25 mUのγ-GT水溶液を添加し、イクオリンの発光を観測した。その結果、蒸留水をGSH-LNPLDに添加した時にはイクオリンの発光は観測されなかったが、γ-GT水溶液を添加した時には明確にイクオリンの発光が観測された。この結果より、LNPLDにGSHが固定化されていること、GSH-LNPLDはγ-GTのアッセイに利用できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度に、GSH-LNPLDを用いたγ-GTアッセイ系を構築する予定であったがまだ定量的なデータは得られていない。その理由として、GSH-LNPLD中でイクオリンを長時間安定に保つ検討に時間を要したからであった。また、LNPLD はpH 7.4のHepes buffer中では凝集しやすく、安定な粒子が形成できないのも問題であった。しかし、Hepes bufferに1%ショ糖を加えることで、現時点でこの問題は解消している。当面の課題は、GSH-LNPLDの粒子外に存在しているイクオリン、および縮合剤のNHS/EDC、GSH-LNPLD懸濁液中の未反応のGSHをどのように除去するかである。ゲルろ過クロマトグラフィーで主に高分子であるイクオリンを除去した後、半透膜を用いた透析により低分子化合物を除去し、純粋なGSH-LNPLDを調製する方法を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、夾雑物のない純粋なGSH-LNPLDを早急に完成させる。種々のUのγ-GT水溶液に対するGSH-LNPLDのイクオリン発光量を観測し、定量的なデータを得る予定である。また、β-アミロイドタンパク(Aβ)を修飾したAβ-LNPLDを調製し、セクレターゼに対するAβ-LNPLDの応答性を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究に必要な機器の修理・試薬等を購入していった結果、残金が116円となった。この金額では新たに試薬等を購入するのは不足なので、残金を次年度に繰り越し有効に利用したい。 (使用計画)翌年度配当額である1,100,116円の内訳として、消耗品費 1,050,116円、国内旅費 50,000円を計画している。
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