本申請課題は、革新的な酵素アッセイシステムを構築するために、粒子の表面を酵素-基質の特異的反応の場として提供し、その分子間相互作用をトリガーとしてイクオリン(AQ)の発光現象を導く新規の脂質ナノ粒子発光デバイス(LNPLD)の開発を目的としている。本申請課題では、グルタチオン(GSH)をモデル基質として選び、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GT)アッセイが可能なLNPLDの開発研究をおこなった。LNPLDの構成脂質のカルボキシ基とGSHのアミノ基をアミド結合させ、LNPLD の表面にGSHを修飾したGSH-LNPLDを調製した。GSH-LNPLDにおいて、0.1~0.4 Uのγ-GT量の範囲においてAQの発光強度との間で直線性が認められた。一方、GSHを修飾していないLNPLDではγ-GTを添加してもAQの発光はほとんど観測されなかった。この結果から、GSH-LNPLDはγ-GTを検出するのに有用であることが示された。さらにLNPLDのγ-GTに対する応答性を向上させるべく、GSHをリンカーに用いることを検討した。すなわち、GSHの2つのカルボキシ基にそれぞれLNPLDを結合させたデュアル型GSH-LNPLD(LNPLD-GSH-LNPLD)の開発をおこなった。しかし、LNPLD-GSH-LNPLDでは、γ-GTに対し応答性は示すものの、定量性は得られなかった。また、LNPLD-GSH-LNPLD の応答性は、GSH-LNPLDのそれよりも低かった。これらの結果は、GSHが2つのLNPLD間を修飾できていない、すなわちリンカーとして機能していないと考察された。 以上、本申請課題の成果において、GSH-LNPLDのγ-GTの定量域は臨床現場において使用するには感度が不足しているものの、LNPLDを用いてγ-GTアッセイができる可能性を示すことができた。
|