研究課題/領域番号 |
18K06613
|
研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
前川 京子 同志社女子大学, 薬学部, 教授 (70270626)
|
研究分担者 |
安達 基泰 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 上席研究員(定常) (60293958)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 薬物代謝酵素 / 遺伝子多型 / X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
薬物代謝酵素CYP2C9は、複数の基質結合部位を有するアロステリック酵素である。昨年度までの成果として、X線結晶構造解析により、CYP2C9.1(野生型)にはロサルタンの結合部位が3箇所(①活性中心、②末梢、③アクセスチャネル)存在するが、CYP2C9.2(*2変異型)には、ロサルタンの結合部位が1箇所(①活性中心)のみであることを明らかにしている。今年度は、CYP2C9.1及びCYP2C9.2精製タンパクを用いて、ロサルタンに対する代謝活性をin vitroで測定し、X線結晶構造解析の結果と総合してCYP2C9.2のロサルタンに対する代謝活性変化のメカニズムを考察した。さらに等温滴定カロリメトリー(ITC)法を用いた相互作用解析を行った。 ロサルタンの代謝物であるE-3174産生のMichaelis-Menten モデルのパラメーターをCYP2C9.1とCYP2C9.2で比較したところ、Km値に有意な変化はなかった。一方、CYP2C9.2のVmax値、及びintrinsic clearance値は、野生型の約50%に有意に低下した。CYP2C9.2による活性低下は、Cytochrome P450 reductase (CPR) の膜画分に、精製CYP2C9タンパクを添加して代謝反応を行った場合でも、CPRとCytochrome b5(b5)を共発現する膜画分に、精製CYP2C9タンパクを添加した場合でも、同程度に認められた。これらの結果より、CYP2C9.2は活性中心の構造には影響を与えず、ロサルタンに対する結合の親和性はCYP2C9.1と同等であること、一方で、F-Gヘリックスやアクセスチャネルの構造を変えることで、基質が活性中心に到達する効率を低下させて代謝反応を低下させる可能性が示された。またこのメカニズムに、b5は関与しないと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大で、緊急事態宣言中に大学キャンパスが閉鎖されたことから、実験を伴う研究活動に支障を生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
結晶化を容易にするため、より純度の高いタンパク精製の検討も行う。CPRタンパクの大腸菌発現系、精製法を確立し、変異体活性低下のメカニズム解析に用いる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大で海外メーカーの試薬が購入できなかったこと、緊急事態宣言中に実験が中断したこと、から、次年度使用額が発生した。次年度使用額は、次年度の消耗品代にあてる。
|