研究課題/領域番号 |
18K06614
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
戸塚 裕一 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (50312963)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ナノコンポジット / 溶解度改善 / 糖転移ルチン / 糖転移へスぺリジン / 糖転移ステビア / 糖転移ナリンジン / 難水溶性化合物 |
研究実績の概要 |
食品添加剤として安全に使用されている、「へスぺリジン、ルチン、ナリンジンおよびステビア」に酵素処理技術の発展により糖鎖を転移させた機能性食品添加剤として、「糖転移ヘスペリジン、糖転移ステビア、糖転移ルチン、糖転移ナリンジン」に着目した研究を展開している。本研究で用いている機能性添加剤に共通する特徴的な現象は、糖が1分子付加されるだけでも、溶解度が1万倍以上にも上昇することである。この現象は機能性食品開発・生産化にとって大変有益であったが、なぜ糖を1つ付加しただけで大幅な溶解度上昇が起きるのかは不明であった。 上述の現象が水溶液中での可溶性の有機ナノクラスター構造の形成に起因することを明らかとし、また、このナノクラスター構造中の疎水的環境部位に難水溶性の医薬品や難水溶性の食品中有効成分を封入したコンポジット構造(有機ナノコンポジット)が形成されることも報告してきた。しかし、その詳細構造についてはわかっておらず、その構造解明が大きな課題となっている。 申請時に目標として掲げた大きな3つの柱として、[課題I] NMR法による有機ナノコンポジット構造の推定:水中構造の特定、[課題Ⅱ] 有機ナノコンポジットの混合ミセル形成による構造安定化の解明、[課題III] ハイブリット型有機ナノコンポジットによる構造安定化の解明を掲げた。本年は、難水溶性化合物の可溶化効果の実用例の報告に取り組みながら、水中構造の同定を研究しており、その中で本年は課題 Ⅱと課題Ⅲにおいて発展的な成果が得られている。具体的には糖転移ステビアを用いた混合ミセルの設計、糖転移ルチンを用いた粉砕助剤としての有用性、糖転移ステビアと水溶性高分子とのナノコンポジット構造を安定化させるゼリー処方の発展に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
複数の計画を立てて申請を行ったため、課題の実現が厳しいことも想定されたが研究計画に掲げた[課題II] 有機ナノコンポジットの混合ミセル形成による構造安定化の解明、[課題III] ハイブリット型有機ナノコンポジットによる構造安定化の解明に対して、本年度は3つのプロジェクトに極めて順当な成果が得られた。 具体的な成果の得られたプロジェクトのうち3つの内訳として、1.糖転移ステビアを用いた混合ミセル構造の発展研究、2.糖転移ルチンを用いた難溶性化合物のナノ結晶の作成のための粉砕助剤としての有用性の確立、3.糖転移ステビアと水溶性高分子を用いた高次のナノコンポジット構造を安定化させるゼリー処方の成功であり、各プロジェクトにおいてそれぞれ1報ずつの学術論文を投稿することができ、当初の予定を大幅に上回る成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
最新のプロジェクトでは、申請時に目標として掲げた大きな課題として、[課題I] NMR法による有機ナノコンポジット構造の推定:水中構造の特定に関して重点的に取り組んでおり、本年度は、NMRを用いた水中でのナノコンポジット構造の相互作用様式に関しての成果を出すことを目標としている。これに関しては、測定手法および解析等に関して、簡単には成果が得られないことは容易に予測されるが、現在、ナノコンポジット構造化による、難水溶性ポリフェノールの可溶化機構に関して、良好なデータが得られつつあるため、大きな成果へと発展することを期待している。 2年目以降は、水中でのナノコンポジット構造における相互作用様式を精査することが、第一目標であり、千葉大学薬学部との共同研究によりより詳細な相互作用の解明について検討予定である。また、ナノコンポジットの水中構造の形や大きさについても小角X線散乱測定などから精査して、研究を発展させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データマイニング統計解析用ソフトのライセンス料の更新費として、30万円ほどを予定していたが、更新が次年度になることが判明したため、次年度にライセンス料の更新を行うこととした。 本年は、別会社のソフトフェアを購入するもしくは、現行のソフトウェアのライセンスを更新して研究する予定である。
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