難水溶性医薬品や難水溶性食品中有効成分を効率的に吸収・摂取することを目指して、難水溶性化合物の溶解性や吸収性を顕著に向上させることが可能なナノ構造体を発見し、「有機ナノコンポジット構造」の生体への有用性を報告してきた。しかし、その詳細構造が特定できていないことが最大の課題となっていた。本研究では、難水溶性化合物の溶解性・吸収性改善効果が期待可能な数種の有機ナノコンポジット構造の違いを特定するための様々なアプローチを検証するものである。 計画した3つの課題の最大の目標課題は、NMR法による有機ナノコンポジット構造の推定であり、溶液中の2D-NMR測定から、特に本課題ではフラボンの可溶化現象に関して取り組んでいたが、糖転移ヘスペリジンと糖転移ルチン間での溶解度上昇効果について検討し、ナノクラスター構造の違いに関して検討した。本年度の当初計画では千葉大学と共同研究し、論文投稿できるまでのデータを得る予定であったが、新型コロナ感染症の影響を受けて、次年度以降の課題となって現在も進行中である。 2つ目の課題は、有機ナノコンポジットの混合ミセル形成による構造安定化の解明:糖転移ステビア及びイオン性界面活性剤における構造安定化がなぜ起こるのかについては、混合ミセル様の複合体を形成するのではないかとの仮説を立て、その検証の結果、仮説がおおむね正しいことに関して有用な成果が得られたので、2つの投稿論文として公開した。 3つ目の課題は、ハイブリット型有機ナノコンポジットによる構造安定化の解明:難水溶性の食品成分をナノコンポジット構造形成によって100倍~1000倍程度の溶解度向上を達成できる可能性を報告したが、この効果を長時間担保するのは困難であった。そこで、更に水溶性高分子を添加した3成分混合系を調製し、水中で長時間安定な構造を取り得るゼリー剤とすることができる可能性を見出した。
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