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2018 年度 実施状況報告書

エントロピー変化に依存しない新規自由エネルギー変化予測手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K06615
研究機関近畿大学

研究代表者

川下 理日人  近畿大学, 理工学部, 講師 (00423111)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード蛋白質間相互作用 / フラグメント分子軌道法 / 活性予測 / 阻害剤 / HIV
研究実績の概要

本研究の目的は、フラグメント分子軌道法で得られるフラグメント間相互作用エネルギーと、エントロピー-エンタルピー補償側を利用することで、エントロピー変化を用いることなく阻害剤と蛋白質間の自由エネルギーを予測する手法の開発である。その前段階として、フラグメント分子軌道計算によるフラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との間に高い相関関係を有する必要があることから、種々の阻害剤-蛋白質間の複合体系における阻害剤のエンタルピー変化とフラグメント間相互作用エネルギーとの間にどの程度の相関があるかを検証する必要がある。
本年度は主としてHIVプロテアーゼ阻害剤系に関する計算を実行し、フラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との相関を確認したところ、R2 = 0.5326という相関が得られた。さらに、各阻害剤の電荷によってフラグメント間相互作用エネルギーの結果が大きく変化したことから、電荷が0と+1に阻害剤の分類を行った。これらのフラグメント間相互作用エネルギーとの相関関係を確認すると、R2 = 0.8071というさらに良好な相関値が+1の電荷を有する阻害剤複合体で得られた。この結果より、阻害剤分子全体の電荷はフラグメント間相互作用エネルギーに大きな影響を与えることから、電荷の異なる阻害剤複合体においては、電荷ごとに阻害剤を分類して検討する必要があると考えられる。
現在、HIVプロテアーゼ阻害剤の系に関するドッキングシミュレーションとその活性予測および直接トロンビン阻害剤の系におけるエンタルピー変化とフラグメント間相互作用エネルギーとの間の相関検証を行っているところである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、先述の自由エネルギー予測を達成するための前段階として、HIVプロテアーゼ阻害剤の系における、フラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との間の相関に関して検討を行った。
タンパク質構造データバンクから、文献に報告されているHIVプロテアーゼとその阻害剤複合体の構造を23個ダウンロードし、DiscoveryStudioViewer、MOEにより構造修正を行った。複合体にはアンプレナビル、ネルフィナビル、ダルナビル、サキナビル、構造最適化では分子力場としてCHARMmを用いた。計算機はスーパーコンピューター「京」を、ソフトウェアにABINIT-MPを用い、MP2/6-31G 並びにMP2/6-31G*の計算レベルの下、計算を実施した。計算によって得られた蛋白質-阻害剤間のフラグメント間相互作用エネルギーの和と文献中のエンタルピー変化との相関を求め、どの程度の相関関係が成立しているかを検討した。
フラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との相関を確認したところ、R2 = 0.5326という相関が得られた。また、各阻害剤の電荷によってフラグメント間相互作用エネルギーの結果が大きく変化したことから、電荷が0と+1に阻害剤の分類を行い、フラグメント間相互作用エネルギーとの相関関係を確認すると、R2 = 0.8071というさらに良好な相関値が+1の電荷を有する阻害剤複合体で得られた。この結果より、阻害剤分子全体の電荷はフラグメント間相互作用エネルギーに大きな影響を与えることから、電荷の異なる阻害剤複合体系においては、電荷ごとに阻害剤を分類して検討する必要があると考えられる。

今後の研究の推進方策

現在進めているHIVプロテアーゼ阻害剤およびFimH阻害剤に関する活性予測を進め、これを完結させる。ただし、HIVプロテアーゼ阻害剤については文献での報告例が膨大である一方、トレーニングセットの数は文献報告例に限られることから、どの程度の範囲まで予測モデルを拡張できるかも合わせて検討する。そのほか、現在検討を行っている直接トロンビン阻害剤の系についても阻害活性とフラグメント間相互作用エネルギーとの相関を計算する。もし相関が低い場合はどのような点に問題があるのかを考察し、必要であれば再計算を行う。その他、等温滴定型カロリメトリーにより自由エネルギー、エンタルピー、エントロピー変化が測定されている論文をいくつか取得していることから、これらについても同様に計算を行い、相関の検証を行う予定である。
フラグメント分子軌道計算において、ある程度構造や電荷がそろっていれば、フラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との間には良好な相関が得られることが、これまでの計算経験からわかっている。一方、本計算は真空中で計算を行っており、静電相互作用が大きな値を示すことから、阻害剤の電荷によってフラグメント間相互作用エネルギーが大きく変化する。それゆえ、阻害剤の電荷は同じもの同士に分類して検討する必要がある。また、結晶構造間の構造の歪みも相互作用に大きく影響するため、結晶構造間のRMSDなどを計算し、これを考慮してフラグメント分子軌道計算を行う必要がある。

次年度使用額が生じた理由

本年度については書籍の購入を控えたこと、および学会の参加費等はすべて他の経費で賄うことができたため余剰金が生じた。この余剰金は次年度の書籍購入および次年度以降の国際学会等の出張費や参加費に使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 その他

すべて 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [学会発表] フラグメント分子軌道法によるHIVと抗体との相互作用解析2018

    • 著者名/発表者名
      松浦敦、川下理日人
    • 学会等名
      第46回構造活性相関シンポジウム
  • [学会発表] フラグメント間相互作用エネルギーによる自由エネルギー変化予測の検証2018

    • 著者名/発表者名
      富士寛文、川下理日人
    • 学会等名
      第46回構造活性相関シンポジウム
  • [学会発表] Interaction Analysis between MDM2 and Its Inhibitors by Fragment Molecular Orbital Method2018

    • 著者名/発表者名
      Norihito Kawashita, Naoto Motoyama, Tian Yu-Shi, Hirotomo Moriwaki, Tatsuya Takagi
    • 学会等名
      5th International Symposium of Medicinal Sciences, 139th Annual Meeting of the Pharmaceutical Society of Japan
  • [備考] 近畿大学理工学部生命科学科 計算生命科学研究室

    • URL

      http://www.life.kindai.ac.jp/~nkawashita/

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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