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2020 年度 実施状況報告書

エントロピー変化に依存しない新規自由エネルギー変化予測手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K06615
研究機関近畿大学

研究代表者

川下 理日人  近畿大学, 理工学部, 講師 (00423111)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード活性予測 / 相互作用 / 蛋白質間相互作用 / フラグメント分子軌道法
研究実績の概要

本研究の目的は、フラグメント分子軌道法で得られるフラグメント間相互作用エネルギーと、エントロピー-エンタルピー補償側を利用することで、エントロピー変化を用いることなく阻害剤と蛋白質間の自由エネルギーを予測する手法の開発である。その前段階として、フラグメント分子軌道計算によるフラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との間に高い相関関係を有する必要があることから、種々の阻害剤-蛋白質間の複合体系における阻害剤のエンタルピー変化とフラグメント間相互作用エネルギーとの間にどの程度の相関があるかを検証する必要がある。
本年度はヒト炭酸アンヒドラーゼ-阻害剤複合体25構造(Isoform Ⅱ:12構造、Ⅶ:8構造、Ⅷ:5構造)のFMO計算で得られたIFIE-sumとΔHとの相関を計算したところ、R2 = 0.0036であった。また、アイソフォーム毎での相関はそれぞれIsoform ⅡでR2=0.0061、Isoform ⅦでR2=0.0137、Isoform ⅧでR2=0.0002であった。そこで、各アミノ酸残基と実験値との相関に着目した。その結果、Isoform ⅡではPhe131、Isoform ⅦではLeu197、Isoform ⅧではVal202を用いた場合で最も良い相関が得られた。この結果を用いてそれぞれのアイソフォーム毎でのΔHとTΔSの回帰式を構築し、全通りのΔGを予測すると、予測値と実験値との誤差がIsoform Ⅱでは平均3.36 kcal/mol、Isoform Ⅶでは平均2.90 kcal/mol、Isoform Ⅷでは平均2.42 kcal/molで予測できた。よって、ヒト炭酸アンヒドラーゼ阻害剤系ではアイソフォーム毎にΔGの予測が可能であることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、先述のΔG予測を達成するためヒト炭酸アンヒドラーゼ阻害剤系における、IFIEとΔHとの相関から予測式構築を行った。
蛋白質構造データバンク(PDB)から、ヒト炭酸アンヒドラーゼ-阻害剤複合体25構造(Isoform Ⅱ:12構造、Ⅶ:8構造、Ⅷ:5構造)をダウンロードし、構造修正および構造最適化を行った。計算機はスーパーコンピューター京(理研)、FX100(名大)、Oakforest-PACS(東京大)を、ソフトウェアにABINIT-MP(Open ver.1 Rev.15)を用い、MP2/6-31G 並びにMP2/6-31G*の計算レベルの下、計算を実施した。得られた蛋白質-阻害剤間のIFIE-sumと文献中の実験値(ΔH)との相関を計算した。
FMO計算で得られたIFIE-sumとΔHとの相関を計算したところ、全複合体との相関はR2 = 0.0036、アイソフォーム毎の相関はそれぞれIsoform ⅡでR2=0.0061、Isoform ⅦでR2=0.0137、Isoform ⅧでR2=0.0002であった。そこで、残基毎のIFIEを用いてΔHとの相関を計算した。その結果、Isoform ⅡではR2=0.473 (Phe131)、Isoform ⅦではR2=0.564 (Leu197)、Isoform ⅧではR2=0.7256 (Val202)であった。この結果を用いてそれぞれのアイソフォーム毎でのΔHとTΔSの回帰式を構築し、全通りのΔGを予測すると、予測値と実験値との誤差がIsoform Ⅱでは平均3.36 kcal/mol、Isoform Ⅶでは平均2.90 kcal/mol、Isoform Ⅷでは平均2.42 kcal/molで予測できた。よって、ヒト炭酸アンヒドラーゼ阻害剤系ではアイソフォーム毎にΔGの予測が可能であることが分かった。

今後の研究の推進方策

本年度は前年度までの結果をまとめて論文化するほか、一部未完成の部分については論文化につながるよう計算を完了させる。
また、関連の研究成果について、学術集会等での発表を精力的に行い、研究を完結させる。

次年度使用額が生じた理由

本年度は新型コロナウイルスの影響により国内外の学会がオンライン開催となったことに伴い、出張を行うことができず、当該経費が残存したため。
次年度の経費は基本的に旅費として用いる予定であるが、新型コロナウイルスの状況が不明確であるため、場合によってはソフトウェアなどの物品費などに使用する可能性もある。
また、本年度は最終年度のため、論文投稿およびその関連費用としても充当する予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) 図書 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] FMODB: The World’s First Database of Quantum Mechanical Calculations for Biomacromolecules Based on the Fragment Molecular Orbital Method2021

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Takaya, Chiduru Watanabe, Shunpei Nagase, Kikuko Kamisaka, Yoshio Okiyama, Hirotomo Moriwaki, Hitomi Yuki, Tomohiro Sato, Noriyuki Kurita, Yoichiro Yagi, Tatsuya Takagi, Norihito Kawashita, Kenichiro Takaba, Tomonaga Ozawa, Midori Takimoto-Kamimura, Shigenori Tanaka, Kaori Fukuzawa, and Teruki Honma
    • 雑誌名

      J. Chem. Inf. Model.

      巻: 61 ページ: 777-794

    • DOI

      10.1021/acs.jcim.0c01062

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 14-3-3と阻害剤の相互作用解析2020

    • 著者名/発表者名
      富士寛文、川下理日人
    • 学会等名
      第48回構造活性相関シンポジウム
  • [学会発表] フラグメント分子軌道法によるAKR1B10複合体の相互作用解析2020

    • 著者名/発表者名
      吉本耀、川下理日人
    • 学会等名
      第48回構造活性相関シンポジウム
  • [学会発表] フラグメント分子軌道法によるエボラウイルスVP35と阻害剤との相互作用解析2020

    • 著者名/発表者名
      原田一真、川下理日人
    • 学会等名
      第48回構造活性相関シンポジウム
  • [学会発表] フラグメント分子軌道法によるXIAPと阻害剤の相互作用解析2020

    • 著者名/発表者名
      室谷百香、川下理日人
    • 学会等名
      第48回構造活性相関シンポジウム
  • [学会発表] PLS回帰を用いたHIV-1 gp120と抗体17bの相互作用解析2020

    • 著者名/発表者名
      岡山友樹、川下理日人
    • 学会等名
      第48回構造活性相関シンポジウム
  • [学会発表] フラグメント分子軌道法を用いたHEL/HyHEL-10相互作用解析2020

    • 著者名/発表者名
      宮嶋起徳、川下理日人
    • 学会等名
      第48回構造活性相関シンポジウム
  • [学会発表] MO計算を用いたSARS-CoV-2のRBD-中和抗体間の相互作用解析2020

    • 著者名/発表者名
      渡邉一樹、川嶋裕介、福澤薫、渡邉千鶴、本間光貴、田雨時、川下理日人、高木達也
    • 学会等名
      第48回構造活性相関シンポジウム
  • [学会発表] MDM2と阻害剤のフラグメント分子軌道法を用いた相互作用解析2020

    • 著者名/発表者名
      板東竜也、川下理日人
    • 学会等名
      第48回構造活性相関シンポジウム
  • [図書] Recent Advances of the Fragment Molecular Orbital Method: Enhanced Performance and Applicability2021

    • 著者名/発表者名
      (Editor) Yuji Mochizuki, Shigenori Tanaka, Kaori Fukuzawa
    • 総ページ数
      627
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      9811592349
  • [備考] FMO創薬コンソーシアム

    • URL

      https://fmodd.jp/

  • [備考] 近畿大学理工学部生命科学科 計算生命科学研究室

    • URL

      https://www.life.kindai.ac.jp/laboratory/kawashita/

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公開日: 2021-12-27  

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