研究実績の概要 |
ヒドロゲルは水溶性高分子鎖同士が架橋により 3 次元の網目構造を形成した分子集合体であり、その微小環境(ゲルネットワーク)が多糖やたんぱく質のナノファイバーで構成される細胞外マトリックスに類似することから、細胞治療や再生医療の観点から注目されている。本研究では、フラーレンやピラーアレーンなどのナノカーボン類を水溶性ナノ粒子化し、得られたナノ粒子に高分子鎖を架橋したカーボンナノコンポジットゲルを調製し、それらの物性・架橋構造・機能性などを検討した。以下に得られた知見を要約する。 1、シクロデキストリンを用いて水溶性ナノ粒子化したフラーレンC60と両末端をアミノ化したPEG(MW. 30,000)をDMSO中で混合することでC60ナノ粒子を架橋点とした透明で水分保持能力の高いカーボンナノコンポジットゲルを調製した。C70ナノ粒子や抗酸化能を有する水酸化C60ナノ粒子でも同様にヒドロゲルを調製可能であった。 2、レオメーターならびにクリープメーター測定より、架橋点となるフラーレンナノ粒子の量を制御することでヒドロゲルの粘弾性・安定性・強度などの物理学的性質を制御可能であった。 3、UV、NMR等の各種スペクトル測定より、化学結合によりフラーレンナノ粒子とPEG鎖がゲルネットワークを形成していることが示された。また、C60ナノコンポジットゲルは色素や尿毒症物質に対する吸着能を有することが明らかとなった。
本研究で調製したカーボンナノコンポジットゲルは従来のゲルにはない柔軟性・膨潤能・強度・刺激応答性を有する新規ヒドロゲルとして次世代医療の発展に大きく貢献するものと考えられる。
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