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2020 年度 実施状況報告書

「PrPC→PrPSc」変換機構とプリオン構築原理のβへリックスモデルからの解析

研究課題

研究課題/領域番号 18K06621
研究機関国立感染症研究所

研究代表者

萩原 健一  国立感染症研究所, 細胞化学部, 室長 (40192265)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードプリオン / アミロイド / βヘリックス
研究実績の概要

異常型プリオン蛋白質(PrPSc)の推定構造の一つとして提唱されているβへリックスモデルを実験科学的に検証することを目的とする研究を進め、本年度は以下の結果を得た。①正常型プリオン蛋白質(PrPC)がPrPScへ変換される過程でβへリックスへ転換すると推測されている部分を、他の蛋白質のβへリックス配列で置き換えた改変プリオン蛋白質(改変PrP)のcDNAを系統的に作製した。改変PrPをプリオン非感染細胞(神経芽細胞腫由来)およびプリオン感染細胞に発現させ、βへリックス配列の導入により改変体の凝集体形成が亢進するかという点をスクリーニングしたが、そのような改変体は見つからなかった。②マウスPrPのアミノ酸配列の129~156番目をニワトリPrPのアミノ酸配列で置換したキメラ(置換領域のアミノ酸27残基中、18残基がマウスPrPと不一致)が、プロテアーゼK(PK)消化に対して部分的な抵抗性をもつことを前年度までに見つけた。本年度は、マウスPrPの129~215番目まで置換領域を伸長させても、PK抵抗性を示すことを見出した(置換領域のアミノ酸86残基中、66残基がマウスPrPと不一致)。このマウス-ニワトリキメラ体のPK抵抗性断片は、全長がマウス配列のPrPScのPK抵抗性断片と比べてSDS-PAGE上の分子量が半分程度であった。③βへリックスモデルのヘリックス第4層部分(マウスPrPのアミノ酸配列上の141~176番目)を欠失させた改変PrPはPK抵抗性をもつ。そこで、欠失領域を第4層のN末端側半分に縮小したところ、予想に反してそのPK抵抗性は第4層全長の欠失体より減弱した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

実験から得られる結果が、必ずしも当初の予想どおりではなかった。予想外の実験結果から、当初の計画には無い追加実験の準備・実施が必要だった。また、COVID-19に関連する優先業務のため、本研究のエフォート率が低下した。

今後の研究の推進方策

βへリックス配列を移植した改変PrPでは凝集体形成が亢進するだろうかという点について、培養細胞に改変PrPを発現させて引き続き検討する。また、本研究の途上で、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)残基の光照射による架橋反応(Chem Biol, 7: 697 (2000))に着想を得て、光架橋反応によるプリオン凝集体の解析を進めている。これまでの実験から、PrPScのアミノ基側の領域(アミノ酸配列のおよそ110~160番目)のTyrもしくはTrpがPrPSc単量体同士の境界面に位置するらしいと推測している。改変PrPによる実験と光架橋実験は相補的であり、並行して研究を進める。計算シミュレーションやクライオ電顕像等のthreadingによってこれまでに導かれているプリオンのβへリックスモデルに、実験科学による情報を付与することを最終目標とする。

次年度使用額が生じた理由

旅費予算が未使用となった。また、論文完成が計画より遅れ、論文作成・掲載の予算が未使用だった。消耗品については、既製の蛋白質電気泳動ゲルの代わりに自製品の適宜使用、業者のキャンペーン価の活用、プラスチック製品の再利用、などにより消耗品費の支出を抑えることができた。次年度に論文投稿ができるように研究を進めており、未使用額は投稿費用に充てる。また、必要な消耗品の購入費等に使用する。

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公開日: 2021-12-27  

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