Fasによるアポトーシス誘導機構は、ミトコンドリア外膜透過を必要とするか否かにより、「内部経路」と「外部経路」の2種類に大別される。「内部経路」では、活性化型Caspase-8がBcl-2ファミリータンパク質のBIDを切断することで切断型BID(tBID)が産生される。tBIDはアポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質を制御し、ミトコンドリア外膜の透過性を亢進させる。これによりミトコンドリアから細胞質に放出されたアポトーシス促進性タンパク質によってCaspase-3が活性化し、アポトーシスが誘導される。一方、「外部経路」では、ミトコンドリア経路を介さずに、Caspase-8がCaspase-3を直接活性化し、アポトーシスが誘導される。今年度の解析により、STK11は抗アポトーシス因子XIAPの分解を促進することにより外部経路を活性化することが判明した。 BID欠損HeLa細胞にSTK11を安定発現した細胞株では、Fasリガンド処置依存的なXIAPの減少が認められた。この減少は、プロテアソーム阻害剤MG-132の共処置により抑制され、ユビキチンリガーゼ活性を欠損した変異体XIAPでは認められなかったことから、STK11はFasリガンド処置依存的なXIAPの自己分解を促進していることが示唆された。さらに、抗XIAP抗体を用いた免疫沈降により、Fasリガンド処置依存的にXIAPとSTK11が結合することが明らかとなった。XIAPとの結合配列を欠損させたSTK11は、XIAPとの結合不全を生じ、BID欠損細胞におけるFasリガンド処置依存的なXIAPの減少およびアポトーシス誘導を促進しなかった。したがって、内部経路不全細胞株であるBID欠損細胞において、STK11はXIAPとの結合を介した分解促進により、Fas誘導性アポトーシスを促進することが示された。
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