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2018 年度 実施状況報告書

がん抑制遺伝子INPP4Bの抗がん機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K06623
研究機関秋田大学

研究代表者

高須賀 俊輔  秋田大学, 医学系研究科, 助教 (90375262)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードINPP4B / PTEN
研究実績の概要

ホスファチジルイノシトール-3,4,5,ー三リン酸(PIP(3,4,5)P3)は細胞増殖制御において中心的な役割を果たすリン脂質シグナル分子である。我々は、ホスファチジルイノシトール-3,4-二リン酸(PI(3,4)P2)の脱リン酸化酵素と考えられてきたがん抑制遺伝子産物INPP4Bが、PI(3,4,5)P3をも基質とすることを独自に見出し、報告した。本研究ではこのINPP4Bの脂質リン酸化活性によって担われる抗がん作用の機序を、培養細胞および病態モデルマウスを用いて明らかにすることを目的としている。特に、種々のがんで高頻度に欠失しているPI(3,4,5)P3脱リン酸化酵素PTENの機能をINPP4Bが代替しうる可能性に着目している。
平成30年度には、非アルコール性依存性肝炎(NASH)モデルとして知られる肝特異的PTEN欠損マウスを用いたin vivoでの検証を行った。本モデルではPTEN欠損による前がん病変(脂肪肝・線維化)が顕著であり、PI(3,4,5)P3の過剰な蓄積によるAkt経路の活性が認められる。肝臓は外来遺伝子導入が容易な臓器であり、目的外来遺伝子をアデノウイルスベクター用いて尾静脈から投与することで、組織における効率的かつ持続的な発現を導くことが出来る(目的遺伝子の下流にIRESーEGFPを挿入しておくことで、外来遺伝子の発現を抗GFP抗体による免疫染色により確認できる)。本手法を用いて、アデノウイルスベクターに野生型および脱リン酸化活性を完全に消失させたC842S変異体のINPP4Bを組み込み、それぞれ4週齢の肝特異的PTEN欠損マウスに投与して、前がん病変の一つである10週齢時の脂肪肝への影響を検討した。しかしながら、野生型のINPP4B遺伝子発現によって統計的に有意な脂肪肝の抑制は認められなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画に従って、まず、肝特異的PTEN遺伝子欠損マウスにおける前がん病変(脂肪肝)を指標とした検討を行った。肝特異的PTEN欠損マウスにアデノウイルスベクターを用いて、野生型もしくは活性消失型のINPP4Bを発現させたが、期待していたようなINPP4BによるPTENの機能代替を示すような結果は認められなかった。アデノウイルスベクターによる遺伝子導入効率が問題となった可能性が考えられる。研究計画時より懸念していた問題点であり、全ての細胞でINPP4Bを発現させるためのトランスジェニックマウスを作製するため、胚性幹細胞(ES細胞)の相同組換え法による組換え体のスクリーニングを実施している。

今後の研究の推進方策

研究計画に従って、組織特異的なINPP4B過剰発現トランスジェニックマウスを作製する。本トランスジェニックマウスと、各組織特異的なPTEN欠損マウスを交配することで、種々のがんにおいて、INPP4BがPTENの機能を代替しうる可能性を探る。加えて、細胞レベルでの解析によって、PTEN欠損をINPP4Bの過剰発現で代替出来るか検証する。

次年度使用額が生じた理由

3月に購入依頼した試薬が輸入扱いとなり4月の納品予定となってしまったため。次年度の同試薬の購入に充てる計画である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] PIKfyve regulates melanosome biogenesis2018

    • 著者名/発表者名
      Liggins Marc C.、Flesher Jessica L.、Jahid Sohail、Vasudeva Priya、Eby Victoria、Takasuga Shunsuke、Sasaki Junko、Sasaki Takehiko、Boissy Raymond E.、Ganesan Anand K.
    • 雑誌名

      PLOS Genetics

      巻: 14 ページ: e1007290

    • DOI

      10.1371/journal.pgen.1007290

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] TMEM55a localizes to macrophage phagosomes to downregulate phagocytosis2018

    • 著者名/発表者名
      Morioka Shin、Nigorikawa Kiyomi、Okada Eri、Tanaka Yoshimasa、Kasuu Yoshihiro、Yamada Miho、Kofuji Satoshi、Takasuga Shunsuke、Nakanishi Hiroki、Sasaki Takehiko、Hazeki Kaoru
    • 雑誌名

      Journal of Cell Science

      巻: 131 ページ: jcs213272

    • DOI

      doi: 10.1242/jcs.213272

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The effect and possible clinical efficacy of in vivo inhibition of neutrophil extracellular traps by blockade of PI3K-gamma on the pathogenesis of microscopic polyangiitis2018

    • 著者名/発表者名
      Kimura Hirotaka、Matsuyama Yasushi、Araki Sachiko、Koizumi Atsushi、Kariya Yumi、Takasuga Shunsuke、Eguchi Satoshi、Nakanishi Hiroki、Sasaki Junko、Sasaki Takehiko
    • 雑誌名

      Modern Rheumatology

      巻: 28 ページ: 530~541

    • DOI

      10.1080/14397595.2017.1367116

    • 査読あり
  • [図書] 脂質クオリティ2018

    • 著者名/発表者名
      高須賀俊輔・佐々木雄彦(編集=有田誠)
    • 総ページ数
      220
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      978-4-7581-0371-8

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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