研究課題/領域番号 |
18K06624
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武富 芳隆 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (40365804)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脂質 / 皮膚 / アレルギー |
研究実績の概要 |
本研究では、リン脂質代謝の初発段階を制御するホスホリパーゼA2(PLA2)分子群の固有の機能に着目し、環境因子の曝露に対する防御反応や組織恒常性の破綻に基づくアレルギーの発症進展に関わる未知の脂質代謝とその意義を解明することを目標に下記の検討を行った。 PLA (PLA1またはPLA2) 欠損マウスの包括的スクリーニングにより、細胞外酵素であるPLA2G3の欠損マウスにおいて通常飼育環境下で皮膚のバリア機能が損なわれていることを見出した。PLA2G3はマウスおよびヒトの表皮角化細胞の分化に伴い発現誘導され、表皮顆粒層に局在していた。本酵素の欠損マウスは、(1)表皮バリアに重要な役割を担う天然保湿因子が減少し、経表皮水分蒸散が上昇する、(2)タンパク質抗原が表皮を超え真皮の方へと浸透し、アトピー性皮膚炎が増悪する、(3)表皮角化細胞の増殖分化と2型免疫応答の異常を生じる、などの表現型を発症した。この皮膚バリア機能の乱れは表皮選択的にPLA2G3を欠損させた場合においても認められ、表皮角化細胞に発現しているPLA2G3が皮膚バリアに関わることが示唆された。PLA2G3欠損マウスの皮膚を用いた脂質メタボローム解析、表皮角化細胞における脂質代謝酵素・受容体の発現プロファイリング、および代謝酵素・受容体の欠損マウスの皮膚のバリア機能の網羅的スクリーニングを通じて、PLA2G3の下流でアラキドン酸代謝経路が皮膚バリアの調節に関与する可能性が浮上した。ヒト皮膚において、PLA2G3の発現はアトピー性皮膚炎の重症度と逆相関関係にあった。以上の結果より、PLA2G3は皮膚においてアラキドン酸代謝を動かすことにより皮膚のバリア恒常性の維持に重要な役割を担うことが明らかとなった。本脂質経路を応用する戦略はアレルギーの予防治療や皮膚の健康増進に繋がることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PLA2分子群の欠損マウスを用いた包括的スクリーニングを通じて、皮膚バリアに関わるPLA2分子を同定し、本PLA2欠損を研究の基盤として皮膚バリア機能の調節に関わる未知の脂質代謝を同定することに成功した。本研究は、所属研究室が推進する研究のひとつの柱と言えるまでに発展したことから、今後の研究の進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
皮膚バリアを制御する脂質経路に関して、次年度は脂質受容体に着目した研究を展開することにより、脂質の動員から受容にかけての脂質フローの全体像を解明する。さらに、研究を皮膚から全身のアレルギー性疾患へと発展させ、当該脂質経路のアレルギーマーチにおける重要性を検証するとともに、皮膚バリア機能の強化によるアトピー予防治療に関する分子基盤を構築することを目標とする。
本研究のもうひとつの目的は、環境因子の曝露に対する防御反応のひとつとしてアレルギー担当細胞の一種であるマスト細胞の応答の調節に関わる機能性脂質の実体とその動員経路を同定することである。これまでに、我々は組織微小環境依存的なマスト細胞の量と質の調節にPLA2依存的脂質経路が関与することを報告したが、これとは別の脂質代謝経路が関与することが明らかになってきた。次年度はこちらについても脂質受容体に着目した研究を推進し、マスト細胞と組織微小環境の相互作用の調節に関わる新しい分子機構を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は所属研究室のラボ移転から2年目であり、特に後期に欠損マウスのラインアップの充実を契機に研究環境が向上した。このため、使用予定であった前期使用額を次年度使用額として計上した。
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備考 |
2019年1月~ 東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻 生化学・分子生物学講座 細胞情報学分野 講師
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