研究課題
本研究では、リン脂質代謝のボトルネック酵素であるホスホリパーゼA2(PLA2)分子群を応用し、本酵素群の網羅的欠損マウスに脂質メタボローム解析を展開することにより、細胞外分泌性sPLA2を起点とした脂質代謝の新機能を解明した。(1)表皮角化細胞の分化に伴い発現誘導されるPLA2G3は、細胞外アラキドン酸代謝(PGE2/PGF2α)経路を通じて皮膚バリアの統制に重要な役割を果たすことを見出した。表皮におけるPLA2G3、PGE2受容体EP4、PGF2α受容体FPの各表皮特異的欠損マウスは、皮膚バリア異常と2型免疫の亢進、痒みと掻痒の亢進、アトピー性皮膚炎の悪化やアトピーマーチを発症すること、EP4は2型免疫の亢進、FPは表皮角化細胞の分化に関わり、PLA2G3欠損マウスによる皮膚異常は当該脂質を投与することにより改善することを明らかとした。(2)マスト細胞から分泌されるPLA2G3は、マスト細胞由来エクソソームの膜リン脂質を分解してリゾリン脂質とアラキドン酸を動員し、リゾリン脂質はLPA、アラキドン酸はPGD2へと更に代謝されることにより、マスト細胞の成熟が調節されることを見出した。マスト細胞成熟の動作原理として、LPAはマスト細胞隣接の線維芽細胞に発現しているLPA1受容体を介してマスト細胞と線維芽細胞の接着、及びマスト細胞の成熟に資する線維芽細胞からのIL-33あるいはPGD2の産生を増強することを明らかとした。(3)機能未知の新規酵素であるPLA2G12Aは線維芽細胞から分泌され、マスト細胞由来エクソソームの膜リン脂質からリゾリン脂質LPEを動員し、マスト細胞の抗原依存的な即時型アレルギー応答を増強することを見出した。本酵素の欠損マウスではIgE抗原刺激によるアナフィラキシー応答が低減し、本応答性は欠損マウスへのLPEの投与により野生型マウスの応答と同等まで回復した。
すべて 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Cell Rep
巻: 33 ページ: 108265
10.1016/j.celrep.2020.108265.
巻: 33 ページ: 108477
10.1016/j.celrep.2020.108477.
Biomolecules
巻: 10 ページ: E1457
10.3390/biom10101457.
https://lmmhs.m.u-tokyo.ac.jp/home_j.html