研究課題
TGF-β(transforming growth factor-β)は多様な細胞応答を調節するサイトカインである。TGF-βは転写因子であるSmad2あるいはSmad3(Smad2/3)を活性化し、活性化したSmad2/3はSmad4を含むSmad複合体を形成し標的遺伝子のプロモーター領域に結合し、遺伝子発現を制御する。本研究はSmad複合体との親和性は同程度であるがプロモーター活性化能が異なる2種類のDNA配列を用いて、Smad複合体による転写活性化の必要条件を明らかにすることを目的とする。2019年度は、Smad複合体とDNAの結合について、EMSAにより検討した。CAGAC配列を3個持ち、TGF-β応答性のないDNA配列(3xCAGA)と、CAGAC配列を6個持ちTGF-β応答性を示すDNA配列(6xCAGA)でのSmad複合体の結合を比較したところ、3xCAGAと比較して6xCAGAではより大きなDNA-Smad複合体が検出された。次に、Smadと協調して働く転写因子であるTCF7L2の結合配列(TTE)と3xCAGA配列からなるレポータープラスミドを用いてTGF-β依存的な転写活性化について検討した。TTEあるいは3xCAGA単独ではTGF-β応答性はなかったが、この配列を並べることでTGF-β依存的な転写活性化がみられた。以上の結果から、3xCAGAはSmad複合体が結合する転写活性化能を持たない配列であるが、この配列が2個あるいはSmad cofactor結合配列と共存することでSmad複合体2ユニットあるいはSmad複合体とSmad cofactorの1ユニットずつからなる複合体が形成され、TGF-β依存的な転写活性化能を持つと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
TGF-β依存的な転写活性化には、DNA上にSmad複合体2ユニットあるいはSmad複合体と他の転写因子1ユニットずつで存在する必要があることを見いだし、論文報告した。
今年度は、2019年度に見いだしたSmas cofactorとSmadによる転写活性化とSmad-Smad cofactorによって制御される標的遺伝子について検討を行い、TGF-β依存的な転写制御のさらなる解明を目指す。
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すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
J Biol Chem.
巻: 294 ページ: 15466-15479
10.1074/jbc.RA119.009877.