研究課題/領域番号 |
18K06630
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
久下 周佐 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (50186376)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | BAG-1 / ROS感知 / xCT / SLC7A11 / eIF2α脱リン酸化 / P53 |
研究実績の概要 |
シスチンを取り込むシスチントランスポーター(xCT)の遺伝子(SLC7A11)の抑制は、細胞内の還元型グルタチオンレベルの低下と過酸化水素の増加に起因した細胞死(フェロトーシス)に導くことから、抗がん剤のターゲットとして着目されている。SLC7A11の発現誘導機構として、P53による転写抑制の解除と転写因子ATF4による転写活性化が必要である。前者はストレスによるP53のアセチル化修飾が必要で、後者は統合ストレス応答によるeIF2αのリン酸化誘導がATF4の翻訳促進が寄与する。 申請者らはHSC70/HSP70のコシャペロンであるBAG-1が過酸化物質と反応してeIF2αの脱リン酸化を抑制し、その結果ATF4の発現が増強し過酸化物質抵抗性に寄与する機構を見出してきた。しかし、このBAG-1に依存した抗酸化ストレス活性は、P53欠損がん細胞では低いことからBAG-1とP53の寄与を明らかにする必要があった。そこで、P53によるSLC7A11(xCT)の発現制御が鍵なると考えxCT阻害剤の感受性を比較した。xCT阻害剤は培養液中のシスチンの細胞内輸送と細胞内グルタチオンレベルの低下により細胞内過酸化水素レベルを上げ細胞増殖を阻害する。その結果P53を欠損した細胞においてもxCT阻害剤抵抗性にはBAG-1が必要であることを示した。これはxCT発現におけるP53の寄与を排除した場合もBAG-1/ATF4経路は、SLC7A11以外の抗酸化遺伝子の発現をも誘導して過酸化物質抵抗性に寄与することを示唆している。また、P53欠損細胞ではxCTを構成的に誘導することで酸化ストレスにおけるBAG-1/ATF4の寄与度を下げる可能性が考えられた。そこで現在、この仮説を証明するためにSLC7A11発現抑制効果を保持したP53変異体をP53欠損細胞に導入し過酸化水素感受性へのBAG-1の寄与を明らかにする実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で実験が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、概要に記した実験系は整備されており、BAG-1/ATF4経路によるP53と共同したxCTを制御と抗酸化因子の誘導を介した酸化ストレス抵抗性への寄与を明らかにする研究を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による遅延と発表準備のため。
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