研究課題/領域番号 |
18K06632
|
研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
野口 耕司 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (80291136)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | AKT / リン酸化 / 細胞分裂 / がん |
研究実績の概要 |
異数体性がん細胞の染色体分配機構の異常が遺伝的不安定性や腫瘍内不均一性、薬剤耐性細胞の出現に関わる可能性が注目されている。申請者は、がん関連キナーゼであるAKT3が細胞分裂不全誘導剤に対する耐性に関わるとともに、がん細胞の核の過剰な多倍数化や異数体化を抑制すること、染色体分配機構に関わる可能性について解析してきた。本研究課題では、染色体分配不安定性とその制御メカニズムにおけるAKTの役割を明らかにすることを目的とし、異数体性がん細胞の遺伝的不安定性や染色体分配制御機構と薬剤耐性獲得能に関与する分子群の機能解明を試みている。昨年度の研究で共焦点レーザー顕微鏡を用いてAKT1-3の細胞分裂期における局在を詳細に解析したところ、分裂中期において、AKT1とAKT3はセントラルスピンドルのAurora kinaseに一部オーバラップするような局在を見出した。したがって、従来、AKTは細胞増殖を促進するシグナリングに関係し、DNA合成、細胞生存にかかわると理解されてきた機能以外にも、細胞分裂期に何かしら重要な働きを持つことが予想された。本年度の研究では、実際にAKTが機能するための標的分子の探索を行った。その結果、実際にAKTで制御されうる新規標的分子候補が見いだされた。今後、AKTとこの新規標的分子との機能相関の研究が進展すれば、がん細胞の特性である異数体性とがん関連キナーゼとの関連が初めて明らかにされると期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究から、AKTファミリーの機能が中心体の制御を含む染色体分配機構に関わる事が強く示唆されている。昨年度、共焦点レーザー顕微鏡を用いてAKT1-3の細胞分裂期における局在を詳細に解析したところ、分裂中期において、AKT1とAKT3はセントラルスピンドルのAurora kinaseに一部オーバラップするような局在をあ明らかになった。これらの観察結果を踏まえ、AKTの細胞分裂制御と分裂中期の微小管制御機構との関係を明らかにするため、細胞分裂機構や中心体制御に関わるAKTのリン酸化標的候補分子を探索した。その結果、細胞分裂時に微小管制御にかかわるある分子が、AKTのリン酸化標的部位を持つことを見出し、in vitroの実験系ではあるが、実際にAKTにより特定の部位がリン酸化を受けることを明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
細胞分裂期のAKTが選択的に作用する新規標的候補分子を見出した。AKTはリン酸化酵素なので、この新規候補分子のリン酸化が、細胞分裂機構や中心体制御にどのように関わるか探索する。さらに細胞分裂時におけるチューブリンやアクチン、キネシンモーター蛋白質の重合脱重合などダイナミックな変化にAKTがどのように関与するか検討する。染色体分配機構におけるAKTのリン酸化基質が明らかになれば、その基質分子をノックダウンして機能を阻害したときにどのような染色体分配異常が起こるのか、あるいは核異数体化細胞の増殖がどのように影響されるか検討できるようになる。これらの解析が進めば、AKTの機能を阻害するとなぜ多極化スピンドルが生じて染色体分配の不安定性が誘導されるのか、そのメカニズムや意義がより明確に解明できると期待される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属移籍が生じ、新しい研究環境での実施が遅延したことによる。移籍した組織での研究環境の整備が整わず、その結果研究費の使用予定も保留となったものが生じた。残額分は今後の最終年度の研究実施に合わせ、滞りなく実施していく予定である。
|