研究課題
異数体性がん細胞の染色体分配機構の異常が遺伝的不安定性や腫瘍内不均一性、薬剤耐性細胞の出現に関わる可能性が注目されている。申請者は、がん関連キナーゼであるAKT3が細胞分裂不全誘導剤に対する耐性に関わるとともに、がん細胞の核の過剰な多倍数化や異数体化を抑制すること、染色体分配機構に関わる可能性について解析してきた。本研究課題では、染色体分配不安定性とその制御メカニズムにおけるAKTの役割を明らかにすることを目的とし、異数体性がん細胞の遺伝的不安定性や染色体分配制御機構と薬剤耐性獲得能に関与する分子群の機能解明を試みた。昨年度までの研究で共焦点レーザー顕微鏡を用いてAKT1-3の細胞分裂期における局在を詳細に解析したところ、分裂中期において、AKT1とAKT3はセントラルスピンドルのAurora kinaseに一部オーバラップするような局在を見出した。したがって、従来、AKTは細胞増殖を促進するシグナリングに関係し、DNA合成、細胞生存にかかわると理解されてきた機能以外にも、細胞分裂期に何かしら重要な働きを持つことが予想された。本年度の研究では、実際にAKTが機能するための標的分子の探索を行った。その結果、実際にAKTで制御されうる新規標的分子候補としてKIF23を見出した。今後、AKTとこの新規標的分子KIF23との機能相関の研究が進展すれば、がん細胞の特性である異数体性とがん関連キナーゼとの関連が初めて明らかにされると期待される。
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