研究課題
本研究ではスギ花粉に含まれる病原体関連分子パターン物質(PAMPs: Pathogen-associated molecular patterns)による生理活性を評価し、スギ花粉成分の持つアジュバント活性とその活性化機序を明らかにすることを目的として検討を進めた。本年度は①スギ花粉分画物による他家アレルゲンに対するアジュバント活性の検討②スギ花粉外殻による免疫原性の網羅的解析を行った。①の成果:マウスに卵白アルブミン(OVA)をスギ花粉分画物とともに腹腔投与しマウスの血清中のOVA特異的抗体価を測定してOVAに対する特異的抗体誘導活性の違いについて検討した結果、水溶性成分の画分では特異抗体産生が誘導された一方で、樹状細胞に対して免疫活性を示す外殻の画分は活性を示さなかった。これらの結果はOVAと分画との皮下投与や花粉の経鼻投与による結果と違いがあった。②の成果:マウス骨髄由来樹状細胞に対する花粉外殻での刺激ではTNF関連分子及びヘルパーT細胞の誘導に関わる表面抗原のmRNAが産生誘導された。本研究では生体の免疫機構を利用してのシステミックな評価には至らなかった。これは花粉外殻のサイズは一般的にアジュバント活性を示す粒子状物質に比較してとても大きいことからDectin-1に依存した花粉に対する免疫応答は関与可能な細胞が限定されていることが想定され、投与経路による獲得免疫への作用の違いに関連している可能性が考えられる。以上よりスギ花粉の外殻に含まれるβ-glucanは主に樹状細胞を介して獲得免疫誘導に作用していることが示唆された。今後さらに詳細なBGの作用メカニズムを検討し、花粉の持つアジュバント活性及び花粉症の病態解明、新規治療へつなげていく
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