研究課題/領域番号 |
18K06641
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
神野 透人 名城大学, 薬学部, 教授 (10179096)
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研究分担者 |
香川 聡子 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (40188313)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | TRPチャネル / 侵害刺激 / 種差 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究では、ヒトおよびマウスの侵害受容チャネルTRPA1 (Transient Receptor Potential Ankyrin 1) を安定的に発現するFlp-In 293細胞株を用いて、Methyl 3-(4-Hydroxy-3-methoxy) cinnamateではTRPA1活性化能に約5倍の種差が認められることを明らかにした。 そこで、本年度は、Methyl 3-(4-Hydroxy-3-methoxy) cinnamateによるTRPA1活性化の種差を生じる構造的な特徴を特定する目的で、親電子性化合物によるTRPA1活性化への関与が報告されている3つのCys残基 (Cys621、Cys641およびCys665) をSerに置換した変異体 (hTRPA1/3C)、ならびにMentholによる動物種に特徴的なTRPA1活性化 (マウスではベル型の濃度-反応曲線を示す) の原因となっているVal875 (マウスではGly878に相当する) をGlyに置換した変異体、さらにTRPA1とリガンドの結合に関与するとされるTransmembrane Domain 5-6 (TM5-6) をヒトとマウスの間で相互に置換したキメラを発現するConstructを作成し、変異型TRPA1を安定的に発現するFlp-In 293細胞株を樹立した。 これらの変異型TRPA1の安定発現細胞株を用いて、Methyl 3-(4-Hydroxy-3-methoxy) cinnamateによる活性化への影響を比較した。その結果、hTRPA1/3Cysでは野生型と同様の種差が観察された。一方、hTRPA1Val875Glyでは、Mentholによるヒト型からマウス型応答の変化が認められたものの、Methyl 3-(4-Hydroxy-3-methoxy) cinnamateの種差に対してはその影響は限定的であった。さらに、mTRPA1/hTM5-6でも種特異性の転換は認められなかったことから、Methyl 3-(4-Hydroxy-3-methoxy) cinnamateは今までに報告されているリガンドとは異なる部位での相互作用によりTRPA1を活性化するものと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Methyl 3-(4-Hydroxy-3-methoxy) cinnamateが、既知のリガンドとは異なる部位での相互作用によりTRPA1を活性化する可能性が見出されたことから、当初の計画にはなかった変異体を作成することとなった。ただし、全体の進捗に及ぼす影響は軽微であり、概ね順調に進行しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Methyl 3-(4-Hydroxy-3-methoxy) cinnamateをはじめとする種々の非親電子性のTRPA1リガンドについて、TRPA1の相互作用部位を特定し、構造的な特徴を明らかにする。 また、本研究で明らかとなったTRPA1活性化の種差が、実際の化学物質の有害性評価において及ぼす影響を把握するための新たな評価系の開発に向けた準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による学会の中止により、急遽、旅費等の支出を控えため、次年度使用額が生じることとなった。 当該助成金については、今後の状況を踏まえつつ、今年度の助成金と合わせて物品費、もしくは研究成果の発表にかかる旅費に充当し、有効に活用する予定である。
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