研究実績の概要 |
昨年度までの研究で、ヒトおよびマウスの侵害受容チャネルTRPA1 (Transient Receptor Potential Ankyrin 1) を安定的に発現するFlp-In 293細胞株を用いた実験から、Methyl 3-(4-Hydroxy-3-methoxy) cinnamate (MF) のTRPA1活性化能に約5倍の種差が認められること、親電子性化合物によるTRPA1活性化に関与するCys残基 (Cys621、Cys641,Cys665) ならびに、Mentholによる動物種に特徴的なTRPA1活性化 (マウスではベル型の濃度-反応曲線を示す) の原因となっているVal875は、MFによるTRPA1活性化の種差に関与しないことを明らかにした。 そこで、本年度は、TRPA1を構造的な特徴から4つのセグメント、すなわちAnkyrin Repeatが存在するN-末端領域、Transmembrane Domain 1-4 (TM1-4)、TM5-6およびC-末端領域に分割し、それぞれのセグメントをヒト-マウス間で相互に入れ替えたキメラTRPA1の発現系を樹立し、MFに対する応答性を比較検討した。その結果、hTRPA1/mTM5-6は野生型hTAPA1とほぼ同等の濃度依存性を示したのに対し、hTRPA1/mTM1-4に対するMFの親和性は低下し、そのEC50値はmTRPA1に相当する値であった。これらの結果から、MFは代表的なTRPA1アゴニストであるメントールとは異なり、Transmembrane Domain 1-4におけるTRPA1との相互作用によって種差を生じることが明らかとなった。また、一部のPhthalates類についてもヒトおよびマウスキメラTRPA1の応答性について検討を行い、MFと類似の機序でTRPA1活性化の種差を生じることが明らかになった。
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