研究課題/領域番号 |
18K06642
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
藤室 雅弘 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (20360927)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス / ウイルス / リンパ腫 / カポジ肉腫 / 膜タンパク質 / 転写因子 / プロモーター |
研究実績の概要 |
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)は、健常者に感染すると深刻な疾患を起こさずに潜伏感染し、潜伏感染関連核抗原(LANA)を発現してエピゾームDNAとして核内で維持される。潜伏感染者の免疫不全時に、KSHVはカポジ肉腫やB細胞性リンパ腫を引き起こす。KSHVは、宿主細胞のシグナル伝達や細胞機能を利用または破綻させることで、がん化や感染維持を行なう。我々は、このようなウイルスによる細胞機能の乗っ取り行為を「分子海賊行為」と名付け、そのメカニズムについて明らかにしてきた。特に、KSHVが発現するLANAはウイルスDNAの複製・維持と、宿主細胞内のシグナル伝達や転写制御を脱制御することで、細胞増殖亢進やアポトーシス阻害を誘導する。一方で、ごく少数(1%以下)の潜伏感染したKSHVは、転写因子RTAの発現により溶解感染へと移行し、ウイルス構造蛋白質やDNAを複製して孫ウイルス産生を行なう。 本研究において、申請者はKSHVによる膜蛋白質Xの発現低下と膜蛋白質Yの発現上昇の分子機構とウイルス学的意義を解明する。膜蛋白質Yは薬物トランスポーターで、膜蛋白質XはB細胞特異的膜蛋白質で抗体産生や細胞増殖や接着への関与が報告されている。本研究では、塩基配列と転写因子のデータベース解析、レポーターやゲルシフトアッセイ等の生化学的研究手法、遺伝子改変ウイルス作製等により、宿主細胞の膜蛋白質を標的としたKSHVの分子海賊の機構解析を実施し、KSHVの病原性発現の全貌を明らかにする。また、KSHV関連疾患を標的とした創薬研究も実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜蛋白質X遺伝子のプロモーターの塩基配列と転写因子のデータベース解析、さらに、レポーターアッセイ、ゲルシフトアッセイにより、膜蛋白質Xの遺伝子発現に関わるプロモーター配列と膜蛋白質Xの遺伝子発現を担当する転写因子の同定に成功した。また、膜蛋白質Yの発現に関わるプロモーター配列を同様の手法を用いて同定した。また、KSHV感染B細胞性リンパ腫(PEL)に対する増殖抑制化合物を探索も実施し、幾つかの候補化合物を同定し、それらの作用機序も明らかにした。なお、これらの成果は既に論文として発表している。
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今後の研究の推進方策 |
研究は計画通り実施されており、現在までに変更や問題等は無い。今後も、申請計画に従って研究を実施し、KSHVの病原性発現の全貌解明とKSHV関連疾患化合物の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注した試薬が年度をまたいで届いたため少額の繰り越しが発生した。
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