腎尿細管上皮由来の培養細胞であるMDCKやHEK293細胞を用いて、研究対象であるNKCC2トランスポーターや、K+チャネルであるROMKの安定発現細胞の構築を試みた。しかしながら、これらの細胞を用いて、部分長のNKCC2を一過性に発現させることはできたが、全長のNKCC2を安定に発現させることはできなかった。こうしたことから、機能を保持した全長のNKCC2は腎尿細管の中でもヘンレループの太い上行脚(TALH)の細胞に特異性をもって発現するものと考えられた。このため、腎尿細管細胞の初代培養を試みて、初代培養細胞の中からNKCC2を発現するヘンレループの太い上行脚(TALH)の腎尿細管上皮細胞を単離することを試みた。しかしながら、ここでもTALH由来の細胞を単離することができなかった。今後は、今回、調製できた初代培養腎尿細管細胞を用いて、全長のNKCC2を発現させて研究を進める予定である。また、腎尿細管細胞の初代培養とあわせて実施したミクログリアの初代培養では、モエシンの欠損にともなって細胞の貪食機能や遊走能が障害されることを見出した(Okazaki et al. 2020a)。また、モエシンに対する特異的な阻害剤を用いると、モエシン欠損細胞と同様な貪食機能、遊走能の障害が観察された(Okazaki et al. 2020b)。これらの手法や阻害剤を腎尿細管細胞に適用して研究を進める予定である。一方、マウス腎臓のホモジネートを用いて、モエシンが足場タンパク質であるNHERF1と会合すること、また、研究対象であるNKCC2もまたNHERF1と会合することを見出した。腎組織ではモエシンがNHERF1を介して、NKCC2を細胞骨格と相互作用させる可能性が考えられた。引き続き、ROMKとNHERF1との会合について検討中である。
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