申請者らは、植物由来の低分子化合物であるジアジフェノライドが、ヒトiPS細胞由来の神経前駆細胞の神経突起を伸展させる活性と神経分化マーカーを増加させる活性を有することを発見してきた。本申請プロジェクトにおいては、ジアジフェノライドの作用メカニズムを調べる目的で、ヒトiPS細胞由来の神経前駆細胞に対する遺伝子発現の変化や標的分子を、次世代シークエンサーとネットワーク解析などを用いて包括的に検索してきた。その結果、ジアジフェノライドの処理をしたヒトiPS細胞由来神経前駆細胞において、骨や軟骨の形成に関わるCCNファミリーの遺伝子発現が増大していることを発見した。ヒトを含む脊椎動物では、脊椎などでは神経細胞が骨内に収納されており、発生段階では骨と神経は連携して発生分化が行われると考えられる。CCNタンパク質が、iPS細胞由来の神経前駆細胞の分化過程に関わるという報告は未だなく、その関連性から骨形成と神経分化を結びつける極めて新しい局面を切り開く研究になると期待し、さらに解析を行った。その結果、CCN2タンパク質を用いてヒトiPS神経前駆細胞の神経突起を伸展させること、分子マーカーの発現を上昇させることを発見した。このことはCCN2タンパク質の新しい活性を明らかにし、新しい神経分化物質を発見したことにとどまらず、神経分化と骨分化をリンクさせる結果であると考える。本年度は、さらにヒトiPS細胞より骨芽細胞を作成することに成功し、カルシウムの沈着により骨芽細胞ができていることを確認した。これを用いて、神経分化と骨分化の関係がいっそう解析されると考える。
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