研究実績の概要 |
ZIP8は、亜鉛(Zn)以外にも2価のカドミウム(Cd)やマンガン(Mn)を細胞内に輸送する。近年ZIP8の変異と疾患との関係が見出された。HEK293細胞においてhZIP8 (WT) および変異hZIP8 cDNAを安定的に高発現させ、単一クローンを単離した。hZIP8 (WT)および4種類の変異体、hZIP8 (Val33Met), hZIP8 (Gly38Arg), hZIP8 (Ser335Thr), hZIP8(Ile340Asn) のタンパク質の発現を確認することができ、安定高発現株の樹立に成功した。そこでMnおよびCdの細胞内取込み効率 (1 h) を検討したところ、野生株hZIP8 (WT) 発現細胞ではvectorのみを発現させた細胞よりMnとCdの取り込みが増加した。しかし、hZIP8 (Gly38Arg), hZIP8 (Ser335Thr), hZIP8 (Ile340Asn) 発現細胞におけるMnおよびCdの取込みはvector発現細胞と同じレベルであった。したがって、ZIP8に単一変異が入った場合(Gly38Arg, Ser335Thr, Ile340Asn)は、MnおよびCdの輸送能が低下することがわかった。一方、DT40細胞のZIP8を欠損した⊿ZIP8 DT40細胞にヒトZIP8の野生型および変異遺伝子導入し安定に発現している細胞を作製した。今後、Mn輸送の変化について解析する予定である。 マウス近位尿細管S3領域由来不死化細胞においてZIP8の役割を明らかにするためsiRNAおよびCRISPR-Cas9 によるゲノム編集によりZIP8の発現抑制を試みたが、発現の低下は見られなかった。今後手法を変えて、ZIP8の発現抑制を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低Mn血症を引き起こしたヒトZIP8の変異体遺伝子(Val33Met, Ser335Thr, Gly38Arg, Ile340Asn)を作製し、単一変異体ZIP8を安定的に高発現させたHEK293細胞を作製し、そのMn輸送に対する影響を解析した。DT40細胞についてもZIP8の発現を欠失させた⊿ZIP8 DT40細胞にヒトZIP8の野生型および変異遺伝子導入し安定に発現している細胞を作製できた。今後、Mn輸送に対する影響を解析予定であるためおおむね順調に進んでいると考えている。 一方、近位尿細管S3領域由来のS3細においてsiRNAおよびCRISPR-Cas9系を用いてZIP8の発現抑制を試みたが、膜タンパクであるため発現抑制が難しく、今後さらなる検討が必要である。
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