研究実績の概要 |
亜鉛(Zn)輸送体のZIP8はマンガン(Mn)を細胞内に輸送する。低Mn血症の患者においてZIP8の遺伝子変異が報告され、Mn欠乏により全身症状を呈した。この症状を示す患者がもつ単一変異ZIP8(Val33MetとSer335Thr、Gly38ArgとIle340Asn)を発現する細胞を作製し、Mn及びCdの輸送への影響を検討した。DT40細胞(ニワトリB細胞由来細胞)のZIP8を欠損した⊿ZIP8 DT40細胞にヒトZIP8の野生型および患者と同じ単一hZIP8変異遺伝子導入し安定に発現している細胞を作製した。 ⊿ZIP8 DT40細胞にhZIP8 WT及び4種類の変異体: (Val33Met), (Gly38Arg), (Ser335Thr), (Ile340Asn)を安定的に高発現した細胞株の樹立し、Mnの細胞内取込み効率を検討したところ、野生株hZIP8 WT 発現細胞では⊿ZIP8細胞よりMnの取り込みが著しく増加した。しかし、(Ser335Thr), (Ile340Asn) 発現細胞におけるMnの取込みは⊿ZIP8細胞と同じレベルであった。一方、(Val33Met), (Gly38Arg)発現細胞はZIP8 WT発現細胞より高いMn取り込み効率を示した。また、Cd取り込み効率も同様の結果を示した。 細菌のZIP4のZIP4の3次元構造に基づいてZIP8のTMD構造のトポロジカルモデルを予測した結果、Val33およびGly38はN末端細胞外ドメインに、Ser335およびIle340はTMD5に位置することが予測された。ZIP4においてTMD4およびTMD5はZnの輸送に重要であることが報告されており、ZIP8のTMD5に位置することが予測される場所の変異 (Ser335, IIe340)がMnの輸送能に重要な役割を果たすことが示唆された。
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