抗原特異的TLR4刺激抗体アジュバントと新規免疫抑制経路阻害薬の複合がん免疫療法

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 18K06651
• 研究機関: 国際医療福祉大学
• 研究代表者: 塚本 宏樹 国際医療福祉大学, 福岡薬学部, 准教授 (70423605)
• 研究期間 (年度): 2018-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: Toll様受容体 / がん免疫療法 / 腫瘍免疫 / PD-L1 / アジュバント / CD73 / 低分子薬 / 抗体

研究実績の概要

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫原性が高く抗腫瘍T細胞が誘導されたがんに奏功しやすい。一方、低免疫原性がんへの治療効果は低く、内在性抗腫瘍T細胞の誘導がその治療効果を増強する。本研究は、抗原特異的TLR4刺激抗体アジュバントとCD73免疫抑制経路阻害、PD-1/PD-L1免疫抑制経路阻害による複合がん免疫療法の開発、並びに、チェックポイント阻害抗体に代わる低分子薬の発見、創出を目的にした。
昨年度、モデルがん抗原にOVAを発現するMHC-Ⅰ陽性EG7、陰性B16F10がん細胞の担がんマウスを作製し、OVA/TLR4刺激抗体投与による抗腫瘍効果を明らかにした。また、PD-1阻害抗体とOVA/TLR4刺激抗体の併用効果を実証することができた。本年度は、3LL肺がん等、更にがん種に検討を加え、PD-1阻害抗体、OVA/TLR4刺激抗体の単剤、併用共に、抗腫瘍効果が認められない担がんマウスが新たに示唆された。
前年度までに見出したPD-L1発現阻害化合物の誘導体を50種類以上有機合成し、その構造活性相関について、マウス脾臓細胞などを用いて解析を進めた。さらに、本ヒット化合物に加え、構造の異なる阻害化合物1種を新たに見出した。本化合物は、大量入手が困難なため、有機合成を検討している。
また、CD73阻害抗体とOVA/TLR4刺激抗体投与による複合免疫療法についてその抗腫瘍効果を担がんマウスを用いて予備的に解析した。予想外に、検討した担がんマウスのいずれにおいても、CD73阻害抗体による強い抗腫瘍効果を観察することができなかった。ヒト・マウスCD73阻害化合物は複数見出したが、評価に用いる適切な担がんマウスを見出せていない状況も鑑み、個体レベルでの薬効評価は保留し、PD-L1発現阻害化合物の構造解析を重点的に進めた。

研究成果

• [雑誌論文] Identification of novel biomarkers of hepatocellular carcinoma by high-definition mass spectrometry: Ultrahigh-performance liquid chromatography quadrupole time-of-flight mass spectrometry and desorption electrospray ionization mass spectrometry imaging (2020)
  • 著者名/発表者名: Koshi Nagai, Baasanjav Uranbileg, Zhen Chen, Amane Fujioka, Takahiro Yamazaki, Yotaro Matsumoto, Hiroki Tsukamoto, Hitoshi Ikeda, Yutaka Yatomi, Hitoshi Chiba, Shu-Ping Hui, Toru Nakazawa, Ritsumi Saito, Seizo Koshiba, Junken Aoki, Daisuke Saigusa, Yoshihisa Tomioka
  • 雑誌名: Rapid Communications in Mass Spectrometry 巻: Suppl 1 ページ: e8551
  • DOI: 10.1002/rcm.8551
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] The impact of cell maturation and tissue microenvironments on the expression of endosomal Toll-like receptors in monocytes and macrophages (2020)
  • 著者名/発表者名: Ryota Sato, Tatjana Reuter, Ryosuke Hiranuma, Takuma Shibata, Ryutaro Fukui, Yuji Motoi, Yusuke Murakami, Hiroki Tsukamoto, Satoshi Yamazaki, Kaiwen Liu, Shin-Ichiroh Saitoh, Eicke Latz, Kensuke Miyake
  • 雑誌名: International Immunology 巻: 32 ページ: 785-798
  • DOI: 10.1093/intimm/dxaa055
  • 査読あり / 国際共著
• [学会発表] ヒトperoxiredoxin 4モノクローナル抗体の作製とエピトープ解析 (2020)
  • 著者名/発表者名: 塚本宏樹、紫竹歩、後藤裕徳、小坂井沙緒、富岡佳久、池田義孝
  • 学会等名: 第93回日本生化学会大会
• [学会発表] Toll 様受容体4 刺激抗体の肥満細胞抑制作用 (2020)
  • 著者名/発表者名: 渡邉悠理香、塚本宏樹、小林洋平、富岡佳久
  • 学会等名: 第59回日本薬学会東北支部大会
• [備考] 国際医療福祉大学福岡薬学部薬学科 教員紹介
  • URL: https://fukuoka.iuhw.ac.jp/faculty/ps/teacher/08409.html