抗IL-8抗体産生細胞 (CHO DP-12)にポリアミン生合成阻害剤であるDFMOを添加、あるいはDFMOとポリアミンの一種であるスペルミジンを添加して培養した時の抗体の糖鎖構造をTSKgelFcR IIIA NPRカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーで調べた。このアフィニティークロマトグラフィーでは、抗体に結合したガラクトース (G)の数に応じて抗体を分離することができる。DFMO無添加で培養した時の割合は、G0 (53.4%)、G1 (35.1%)、G2 (11.5%)であるのに対し、DFMO添加により細胞内ポリアミン量を減少させるとG0の割合が49.2%に減少し、G2の割合が15.3%に増加した。更にスペルミジンを添加するとDFMO存在下にも関わらず、G0 (57.1%)、G1 (32.5%)、G2(10.4%)に回復した。この現象は、nano LC-MS/MSによる解析でも確認できた。更に、B4GalT1 mRNAの発現量がポリアミン減少時に有意に増加したことから、ポリアミンはガラクトースの転移に関与することが明らかとなった。次に、ポリアミン減少時に抗体の分泌量も約20%減少することから、小胞体ストレスに関連するタンパク質に着目した。その結果、細胞内ポリアミン量の減少に伴い、免疫グロブリン重鎖結合タンパク質 (BiP)、カルネキシン、およびカルレティキュリンの発現量が増加していた。これらの分子は、糖鎖合成阻害剤であるツニカマイシン処理によっても発現が増加することから、ポリアミンはドリコール結合型オリゴ糖 (LLO)の生合成に関与していることが考えられた。現在、ドリコール結合型オリゴ糖合成酵素の中でポリアミンモジュロンを探索中である。
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