研究課題/領域番号 |
18K06653
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 由起子 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (80610683)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)の特徴的な病理学的所見は、それぞれAβとタウから構成されるアミロイド蓄積である。これらのアミロイドの形成と蓄積がAD発症の原因であると考えられていることから、Aβおよびタウの凝集抑制あるいはクリアランス促進がADの根本的治療に繋がることが示唆される。そこでAD治療を目指し、アミロイドに対して光酸素化触媒と光刺激による人工的な酸素原子付加を検討したところ、酸素化AβはAβ凝集阻害能をもち、脳内においてはクリアランスされやすい可能性を見出した。本研究ではその可能性の検証と分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。 酸素化Aβアミロイドの性状解析として、生化学的な解析を行った。酸素化Aβをウェスタンブロッティングによって解析したところ、酸素化反応特異的に10 kDa付近に抗Aβ抗体に陽性なバンド(以下、10 kDa Aβ)が検出された。このバンドは合成Aβペプチドを用いたin vitroの検討においても観察されたことから、10 kDa AβはAβが2つ結合したダイマーのようなものと考えられた。しかし一方で、チロシンダイマーに対する特異抗体には反応しなかったことから、一般的な酸化によって形成されるチロシンダイマーとは異なることが示された。また、ADモデルマウス脳内に蓄積したAβアミロイドに対して光酸素化反応を行った場合も同様に10 kDa Aβが観察された。以上の結果は、酸素化Aβは構造あるいは生化学的な性質において、変化が生じていることを示唆している。具体的にどのような変化が生じているか、またその意義については、今後検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸素化Aβの性状解析を進められており、新たな知見も得られていることから、おおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
酸素化Aβの性状解析としては、構造解析が可能かどうかを模索する。 一方で酸素化Aβのクリアランスに関しては、まず酸素化Aβを脳内にインジェクションしてその代謝速度を非酸素化体と比較検討する。またクリアランス分子機構としては、マイクログリアによる貪食亢進の可能性についてまずは検討する。分子機構解明においてはin vitro実験系が有用と考えられるため、実験系の構築も目指す。
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