パーキンソン病の原因タンパク質α-シヌクレインが細胞間情報伝達担体として注目され ているエキソソームの積荷として神経細胞外に放出され、プリオンと同様に病原性が伝搬さ れるというモデルが提唱されているものの、その詳細は不明である。申請者らは、細胞内エン ドソーム上のスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体がエキソソーム生成時の積荷ソーテ ィングにおいて必須の役割を果たしていることを報告している。またごく最近、α-シヌク レインがS1P受容体とGタンパク質のカップリングを強力に阻害することを見いだし、報告 した。以上の背景より本研究では、パーキンソン病の病態にS1P受容体シグナルを介するエ キソソーム放出が関与する可能性について検討した。 研究期間中に申請者らは,エキソソームへの積み荷タンパク質であるCD63のエキソソームへのHeLa細胞におけるソーティングが,細胞外α-シヌクレインにより阻害されることを見出し,報告した。さらに,神経細胞のモデルであるSH-SY5Y細胞に蛍光タンパク質mCherryとα-シヌクレインとの融合タンパク質を発現させた系を用いて,α-シヌクレイン処理により細胞内α-シヌクレインの凝集が起こることを見出した。さらにこの凝集はS1P1受容体とGiタンパク質の脱共役によるものであることも証明しつつある。 本研究は,これまで生理学的・病理学的意義が不明であった細胞外α-シヌクレインにより細胞内のα-シヌクレインの凝集が促進されることを見出したものであり,極めて重要であると考えている。今後,S1P1受容体のアゴニストなどの手段により,この細胞外α-シヌクレインの作用をキャンセルできる可能性について検討する予定である。
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