研究課題
本研究では、スフィンゴ糖脂質がリソソームに過剰蓄積して、中枢神経症状を呈するリソソーム病であるスフィンゴリピドーシスの病態におけるリゾ糖脂質の寄与を解析することで、これまで不明であったリゾ糖脂質の生理的機能そして病態に与える影響を解明し、神経難病に対する新規の治療法開発を目的とする。令和元年度は、神経芽細胞腫であるSH-SY5Yに対してCRISPR/Cas9システムを利用してHEXA或いはHEXB遺伝子をKOし、Tay-Sachs病及びSandhoff病モデル細胞を作製した。作製したモデル細胞では、Tay-Sachs患者由来iPS細胞から誘導した神経細胞と同様に、Aktの不活性化が起こり、神経細胞死を示した。これらの細胞について、糖脂質を抽出し、LC-MS解析を行ったところ、コントロールのSH-SY5Y親株と比較して顕著なGM2蓄積が観察された。また、Lyso-GM2についても蓄積が起こっていることが明らかになった。これらのKO細胞に対して、FTY720を処理すると、Aktの活性化が起こり、神経細胞死が抑制された。現在、モデルマウスの脳に投与を行い、解析中である。
1: 当初の計画以上に進展している
令和元年度は、モデル細胞の構築、治療標的のスクリーニング、そして最終年度に予定したモデルマウスを用いた治療法開発まで行うことができた。このため、当初の計画以上に進展していると考えられる。
予定通りに研究が進んでいるため、次年度以降も当初の予定通りに実験を行う予定である。令和2年度については、下記を行う予定である。1. リゾ糖脂質の細胞内局在及び臓器分布解析リゾ糖脂質を蛍光標識した後、細胞に添加することで細胞内局在を解析する予定である。また、各臓器におけるLC-MS解析についても行う予定である。2. 神経系細胞(神経細胞及びグリア細胞)に対するリゾ糖脂質の影響解析と脂質アナログによるモデルマウスを用いた治療効果の検討神経系モデル細胞を用い、リゾ糖脂質の量や生成過程を解析し、その阻害を行うことで治療を試みる予定である。また、シグナルを回復させる脂質アナログをモデルマウスに投与し、治療効果を検討する予定である。
当初の予定より研究が進んだため、必要な試薬等の購入が少なくなり、次年度使用額が生じた。残額については次年度の実験や論文投稿(英文校閲など)に使用する予定である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 6件) 備考 (1件)
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