研究課題
本研究では、スフィンゴ糖脂質がリソソームに過剰蓄積して、中枢神経症状を呈するリソソーム病であるスフィンゴリピドーシスの病態におけるリゾ糖脂質の寄与を解析することで、これまで不明であったリゾ糖脂質の生理的機能そして病態に与える影響を解明し、神経難病に対する新規の治療法開発を目的とする。令和2年度は、これまで構築したモデル細胞においてシグナル解析を行った。その結果、GM2ガングリオシドーシスモデル細胞では、Aktシグナルが減少していることが明らかになった。そこで、リゾ糖脂質の合成に関わる酸性セラミダーゼの阻害剤であるCarmofur処理を行ったところ、減少していたAktシグナルの増大が観察された。この結果は、リゾ糖脂質がAktシグナルを減弱させる原因であることを示唆している。また、GM2ガングリオシドーシスモデルマウスに対し、脳室内にFTY720を処理すると、Aktシグナルが増大することが明らかになった。以上の結果より、スフィンゴリピドーシスで産生・蓄積しているリゾ糖脂質は、細胞内においてPI3K/Aktシグナルを抑制し、細胞死を引き起こしていることを明らかにした。また、S1P受容体アゴニストであるFTY720による処理や酸性セラミダーゼの阻害剤であるCarmofur処理が、スフィンゴリピドーシスにおける神経細胞死を抑制できることを明らかにした。このことから、スフィンゴリピドーシスの脳において、リゾ糖脂質を標的とした治療が行えることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件)
Communications Chemistry
巻: 3 ページ: 6
10.1038/s42004-019-0250-0
Organic Letters
巻: 22 ページ: 7667-7670
10.1021/acs.orglett.0c02855