研究課題/領域番号 |
18K06660
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
井上 靖道 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 准教授 (10450579)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脱ユビキチン化酵素 / 上皮間葉転換 / 浸潤・転移 / がん幹細胞 |
研究実績の概要 |
上皮間葉転換(EMT)は、がんの浸潤・転移をはじめとしたがんの悪性化に深く関与している。したがって、EMTの制御機構を明らかにすることは、新たながん治療法を開発する上で極めて重要である。申請者らはEMTの誘導に関わる転写因子Snailタンパクの安定性を制御する新規脱ユビキチン化酵素(DUB)を同定し、そのDUBががんの浸潤・転移に関与することを見出した。これらの研究成果から、EMTを制御する脱ユビキチン化酵素を同定することで、同酵素の阻害による新たながんの分子標的薬の開発につながると考えた。そこで本研究では、申請者らがすでに研究を進めているSnailに加えて、一連のEMT関連転写因子に対するDUBを同定し、EMT誘導における分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。 本年度までの研究で以下の結果を得た。 (1)DUBによるSnailタンパク発現を介したEMT制御:Snailに対する新規DUBに対する阻害剤を入手し、その阻害剤の処理でSnailタンパクの半減期が減少することを確認した。(2)Twistタンパクを制御するDUBの同定:Twistの脱ユビキチン化をするDUBを同定し、その酵素をsiRNAでノックダウンすることで、Twistレベルの低下、細胞の運動能・浸潤能が低下することを明らかにした。(3)EMTを制御するヒストンメチル化酵素SET8に対するDUBの同定:SET8を脱ユビキチン化する酵素として新たにUSP17を同定した。USP17のノックダウンは、SET8のレベルを低下させるとともにH4K20me1のレベルを低下させ、細胞増殖を抑制した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの目標として、(1)DUBによるSnailタンパク発現を介したEMT制御、(2)Twistタンパクを制御するDUBの同定を挙げていた。(1)については現在論文にまとめているところであり、(2)についてはin vivoでの制御を視野に研究を進めている。また、(3)EMTを制御するヒストンメチル化酵素SET8に対するDUBとしてUSP17を同定し、その作用メカニズムを明らかにした内容を現在論文投稿しているなど、全体としておおむね順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初掲げた計画の通り、本年度は(1)Twistタンパクを制御するDUBの同定、(2)DUBを阻害する低分子化合物によるEMT制御の解析を中心に、昨年度と同様に解析を進めていく予定である。
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