研究実績の概要 |
経済発展に伴う金属による低濃度広範囲な土壌汚染が近年問題となっている。一方で金属汚染の中には経済価値の高いレアメタルも存在するため、汚染金属の安全かつ有効な除去・回収法の開発が求められている。環境浄化技術として注目されるファイトレメディエーションは経済的で環境への影響が少ないという利点を持つ一方、浄化効率に弱点を抱える。研究代表者はこれまでに水銀トランスポーターとして見出された MerC, MerE, MerF, MerT及びMerP が無機水銀、有機水銀、カドミウム、亜ヒ酸及びクロム酸などの有害金属を輸送することを明らかにしていた。本研究では有害金属だけではなく、レアメタルを含む金属輸送活性について明らかにすると共に、金属複合汚染の浄化および回収への利用性を明らかにすることを目的とした。平成30年度は、MerC, MerE, MerF あるいは MerT 組換え大腸菌を用いて、Mer輸送体の銅輸送活性について検討した。その結果、MerE, MerF または MerT をもつクローンはコントロールとほぼ同等の銅取り込み量を示したが、MerC をもつクローンの銅取り込み量はコントロールに比べ有意に高かった。このことから、MerCが銅の輸送活性を有することが明らかとなった。水銀トランスポーターとして同定されたMerCは有害金属だけでなく、生体内の必須微量元素など多様な金属輸送活性を持つことが今回初めて明らかとなった。このことから、MerC組換え植物を用いることで金属汚染の浄化と回収を可能にすることが期待された。
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