研究課題
鳥類ヒナに見られる刷り込み学習は、生後の限られた時期にしか習得できないことから、臨界期を伴った学習の典型例と言える。これまでに、ヒナが刷り込み学習を行うと、T3が脳内に急速流入し臨界期が開始されること、臨界期終了後でもT3を一過的に投与すると閉じた臨界期が再び開き、刷り込みが可能となることを明らかにしたこれまでに、代表者はRhoGTPaseファミリー蛋白質の一つであるRhoキナーゼの活性阻害剤が、T3と同様に臨界期を再び開く活性を有することを見出している。これら阻害剤も、アクチンフィラメントの脱重合を促進し、神経微細構造のアクチン細胞骨格のダイナミクスを調節すると予想された。本年度は、2光子励起レーザ走査型顕微鏡を用い、個体(ヒナ)を生かしたまま大脳の神経微細構造を解析するin vivo イメージング法を用いて、T3 がどのようなメカニズムで学習臨界期を開くのか、という問題を解析した。具体的には、神経細胞棘突起でのアクチン重合を可視化するため、重合アクチンと結合するLifeAct(17アミノ酸のペプチド)とGFP(Green Fluorescent Protein)のfusionタンパク(LifeAct-GFP)を、神経細胞棘突起に発現させ、T3投与に伴う、アクチン細胞骨格のダイナミクスの変化をin vivo イメージングにて解析した。その結果、T3投与後1-3時間では、神経細胞内のアクチンフィラメントの重合を解除し、脱重合の進んだスパインの割合が増加することが明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Scientific Report
巻: 10 ページ: 21183
10.1038/s41598-020-78247-9.