研究実績の概要 |
易感染状態の患者においては、細菌、ウイルス、真菌との複合的な感染を起こすことがあり、その予防または治療には複数の感染症治療薬が用いられる。この時、他の感染症治療薬にAspergillusが曝露される可能性があり、予期せぬ相互作用が懸念される。 これまでに,Aspergillusは菌体外にリムルスG因子活性物質すなわちβ-1,3-glucanを放出することが知れている.アシクロビル添加培養によって,菌体成長に変化が認められたことから,菌体外へ放出する抗原量も変化する可能性があるので添加,非添加条件下にA. fumigatus NBRC 33022を培養し,培養上清を経時的に回収し,β-1,3-glucan含量を抗β-1,3-glucanモノクローナル抗体を用いたELISA法にて測定した.その結果,静注用アシクロビル添加培養では,非添加培養と比較し,培養上清中のβ-1,3-glucan濃度が上昇した.また,非添加培養では,β-1,3-glucan濃度が経時的に減少したのに対し,添加培養では経時的に濃度が上昇した. Aspergillus 細胞壁は,galactomannan,α-1,3-glucan,β-1,3-glucan,chitinなどの多糖と少量の脂質,タンパク質から構成されている.細胞壁を構成する多糖は,真菌における病原関連分子パターンとして,Aspergillusに対する宿主免疫応答に関与していることが知られている.そこで,抗微生物薬の有無によるAspergillus 細胞壁構成成分の変化を検討した. 各菌体をβ-1,3-glucanaseであるzymolyaseで消化し感受性部の割合を比較したところ,添加培養の方が高い割合を示した.抗ウイルス薬添加により,菌体及び菌体外細胞壁多糖の構成が変化していることが示唆された。
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