研究実績の概要 |
易感染状態の患者においては、細菌、ウイルス、真菌との複合的な感染を起こすことがあり、その予防または治療には複数の感染症治療薬が用いられる。この時、他の感染症治療薬にAspergillusが曝露される可能性があり、予期せぬ相互作用が懸念される。これまでに、Aspergillusへの抗微生物薬の添加により、抗真菌薬感受性が変化することが示された。こもメカニズムを解析するために、アシクロビルおよび溶媒であるDMSO添加培養時Aspergillusの遺伝子発現を非添加培養Aspergillusと次世代シーケンサー解析を用いて行った。細胞壁代謝、合成に関わる遺伝子を含め、抗微生物薬添加時に発現変化の認められる遺伝子を明らかにすることができた。また、これまでの検討により、抗微生物薬の添加によって、α-1,3-glucanおよびβ-1,3-glucanなどの細胞壁構成が変化することが明らかとなっている。細胞壁多糖はマクロファージなどの宿主免疫細胞に認識され、生体防御反応を引き起こす。そこで、感染防御においてマクロファージが産生する活性酸素種産生へのアシクロビル添加培養Aspergillusの影響について検討した。アシクロビル添加培養Aspergillusは非添加培養と比較して、高い活性酸素種産生を示した。アシクロビル添加によって、細胞壁構成が変化したことにより、よりマクロファージを刺激することが示唆された。これらの検討により、抗微生物薬添加によりAspergillusの細胞壁構造に変化が起き、抗真菌薬感受性や免疫細胞の活性化に影響することが示唆された。
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