研究課題/領域番号 |
18K06669
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
川原 正博 武蔵野大学, 薬学部, 教授 (40224828)
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研究分担者 |
根岸 みどり (加藤みどり) 武蔵野大学, 薬学部, 助教 (30300750)
田中 健一郎 武蔵野大学, 薬学部, 講師 (30555777)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経毒性 / アポトーシス / 微量元素 / カルシウムホメオスタシス / チャネル |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)、脳血管性認知症(VD)、プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病、牛海綿状脳症(BSE)など)、レビー小体形認知症(DLB)などの神経疾患では、疾患関連タンパク質(それぞれβアミロイドタンパク質(AβP)、プリオンタンパク質(PrPC)、αシヌクレイン(α-Syn))のコンフォメーション変化による異常蓄積と神経毒性とが発症の要因と考えられている。近年、脳内の鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)などの微量元素がこれらの疾患関連タンパク質の多量体化に関与することが明らかになっている。また、脳内のZnによる神経細胞死は脳血管性認知症の発症に関与することも明らかになっている。これらのたんぱく質と金属との関連を明らかにするために、本年度は、すでに確立したサイズ排除HPLCを用いてアミロイド形成たんぱく質の多量体化に及ぼす金属の影響を検討した。その結果、金属イオンによって形成される多量体の特徴が変化していることが観察された。さらに、金属による前処理を行った疾患関連たんぱく質を培養神経細胞に投与し、神経毒性についても検討した。また、これと関連してZn自身による神経細胞死のメカニズムについて検討し、新たにMAP kinase経路が関与していることw見出した。さらに、これらのたんぱく質の多量体化を抑制することが明らかになっているカルノシン(βalanyl histidine)の作用を検討するとともに、カルノシンおよびポラプレジンク(カルノシンーZn錯体)の神経疾患以外の作用として肺疾患に対する影響についても検討した。 また、これまでの研究成果を基に、アミロイド形成タンパク質と金属との相互作用についての仮説を総説としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、申請者は実行委員長として、武蔵野大学において学会(第32回バイオメディカル分析科学シンポジウム)を開催した。なお、研究分担者(田中、根岸)、研究室学生も実行委員およびスタッフとして協力した。開催準備及び終了後の会計処理や報告書作成に予想以上に時間をとられてしまい、その結果特に川原が担当しているHPLCの部分には若干遅れが生じる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、 1)アミロイド形成タンパク質の金属による多量体化解析および毒性解析 AβP、PrP106-126をAl、Zn、Cu、Mn、Feなど種々の金属イオン存在下でincubateすることによって多量体化させ、すでに確立したサイズ排除HPLCを用いて形成された多量体の分子種を単離し、その毒性を検討する。さらに、細胞内カルシウムイメージングを用いて細胞内カルシウム変動、リポソームを用いる膜損傷実験などによりその性質を明らかにする.また、RT-PCRやウェスタンブロッティングを用いて神経細胞死のメカニズム(小胞体ストレス、フリーラジカル産生など)について検討する。これまでにZn自体の神経細胞死pathwayについても検討しており、アミロイド形成タンパク質の結果と比較検討する. 2)神経毒性阻害物質の探索 既に報告されているカルノシンについては、その定量系を開発し、アナログ(ホモカルノシン)も本研究において合成している。これらや他の物質がアミロイド形成タンパクの多量体化及び神経毒性に及ぼす影響を検討する。さらに、毒性を抑制することが報告されている他の薬物についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿論文の査読結果が遅れたため、acceptが2~3月になってしまったため、該当論文の出版費用として約36万を次年度払いとして充てることになった。
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