研究課題
EXTL3のもつ生物学的機能を明らかにしようとしている。EXTL3はヘパラン硫酸生合成酵素の1つと考えられているが、同じくヘパラン硫酸の糖鎖骨格の形成に関わるEXT1/EXT2とは若干性質が異なる。つまり、細胞内での局在部位やノックアウトマウスの致死となる時期、ヘテロ接合体での表現型、生合成過程での硫酸化修飾に与える影響などが異なっている。そこで、特定の臓器(脳とT細胞)に注目し、これらの臓器での特異的な欠損を利用することにより、EXTL3の果たす生物学的意義を解明しようとしている。今年度は、脳のグルタミン酸作動性神経に特異的にExtl3を欠損させたコンディショナルノックアウトマウスを作成した。このマウスを用いて、外見上の特徴の観察、行動上の特徴の観察を行った。行動観察に関してはオープンフィールドテストを行った。これまでのところ、外見上の特徴は特に目立ったものはなく、オープンフィールドテトでも同腹子の野生型マウスと比較して、目立った異常は検出されていない。また、T細胞に特異的にExtl3を欠損させたコンディショナルノックアウトマウスを作成した。外見上の特徴を観察したが、今のところ、目立った異常は検出されていない。EXTL3変異患者由来の細胞を培養し、各グリコサミノグリカン鎖を精製し、その含有量、二糖組成を調べた。患者の細胞に由来するヘパラン硫酸は、その含有量が、健常人のものと比較して減少していた。引き続き、詳細な解析を行っている。これらの研究成果の一部は、国内および国際学会において、発表した。
3: やや遅れている
マウスの繁殖と細胞の培養に時間がかかり、解析の開始が若干遅れため、十分な成果が出ていない。しかし、マウスの繁殖も順調に進んでおり、患者由来の細胞も十分増殖するようになってきた。これらのマウスや細胞を利用して解析を進め、2019年度には遅れを取り戻せるだけの結果が出るものと期待している。
脳のグルタミン酸作動性神経に特異的にExtl3を欠損させたコンディショナルノックアウトマウスに関しては、引き続き解析を行っていく。マウスの行動に関しては、Y-迷路試験、新奇物体認識試験等を実施し、短期および物体認知記憶などの脳機能を調べる。また、免疫組織的な解析も行う。発生段階の異なる脳を用いて、脳内でのヘパラン硫酸とEXTL3の分布を、各成分に特異的な抗体を利用して免疫組織染色により調べ、大脳や海馬の発生や機能への影響を探索する。さらに、異なる発生段階で脳を摘出し、脳をさらに細かく分け、各部位でのヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸の構造を解析し、ヘテロあるいは野生型の同腹子と比較する。具体的には、各グリコサミノグリカン鎖の含有量、二糖組成、鎖長を調べる。T細胞で特異的にEXTL3を欠損させたコンディショナルノックアウトマウスに関しては、引き続き、得られたマウスの外見上の特徴、行動上の特徴を観察する。また、血球を採取し、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸の構造を解析し、ヘテロあるいは野生型の同腹子と比較する。T細胞の分化の程度について、FACSで解析することを検討している。EXTL3変異患者由来の細胞に関しては、さらに詳細に各グリコサミノグリカン鎖の構造を調べる。特に鎖長の変化を調べる。
すべて 2018 その他
すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
http://www-yaku.meijo-u.ac.jp/Research/Laboratory/pathobio/index.html