研究課題/領域番号 |
18K06670
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
山田 修平 名城大学, 薬学部, 教授 (70240017)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | EXTL3 / ヘパラン硫酸 / グリコサミノグリカン / 糖転移酵素 / ノックアウトマウス / 脳 / T細胞 |
研究実績の概要 |
EXTL3のもつ生物学的機能を明らかにしようとしている。EXTL3はヘパラン硫酸生合成酵素の1つと考えられているが、同じくヘパラン硫酸の糖鎖骨格の形成に関わるEXT1/EXT2とは若干性質が異なる。つまり、細胞内での局在部位やノックアウトマウスの致死となる時期、ヘテロ接合体での表現型、生合成過程での硫酸化修飾に与える影響などが異なっている。そこで、特定の臓器(脳とT細胞)に注目し、これらの臓器での特異的な欠損を利用することにより、EXTL3の果たす生物学的意義を解明しようとしている。今年度は、脳のグルタミン酸作動性神経に特異的にExtl3を欠損させたコンディショナルノックアウトマウスを用いて、外見上の特徴の観察、行動上の特徴の観察を行った。行動観察に関してはオープンフィールドテストを繰り返し行った。これまでのところ、外見上の特徴は特に目立ったものはなく、オープンフィールドテトでも同腹子の野生型マウスと比較して、目立った異常は検出されていない。他の行動観察試験も行っている。また、T細胞に特異的にExtl3を欠損させたコンディショナルノックアウトマウスを用いて、外見上の特徴を観察、脾臓を用いたT細胞の分化・成熟の度合いを調べた。これまでのところ、外見上の特徴は特に目立ったものはなかった。FACSでの解析において、T細胞の成熟度に若干未分化の傾向があることを見出したので、再現性の確認と詳細な解析を続けている。EXTL3変異患者由来の細胞を培養し、各グリコサミノグリカン鎖を精製し、その含有量、二糖組成を調べた。患者の細胞に由来するヘパラン硫酸は、その含有量が、健常人のものと比較して減少していた。引き続き、詳細な解析を行っている。これらの研究成果の一部は、国内および国際学会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスと細胞の観察、解析が十分できるようになり、2018年度の遅れを取り戻すことができ、成果が出始めている。しかし、新型コロナの影響で3月下旬から予定通りの実験ができなくなり、2020年度の研究の進行に不安がある。
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今後の研究の推進方策 |
脳のグルタミン酸作動性神経に特異的にExtl3を欠損させたコンディショナルノックアウトマウスに関しては、引き続き解析を行っていく。マウスの行動に関しては、Y-迷路試験、新奇物体認識試験等を実施し、短期および物体認知記憶などの脳機能を調べる。また、免疫組織的な解析も行う。発生段階の異なる脳を用いて、脳内でのヘパラン硫酸とEXTL3の分布を、各成分に特異的な抗体を利用して免疫組織染色により調べ、大脳や海馬の発生や機能への影響を探索する。さらに、異なる発生段階で脳を摘出し、脳をさらに細かく分け、各部位でのヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸の構造を解析し、ヘテロあるいは野生型の同腹子と比較する。具体的には、各グリコサミノグリカン鎖の含有量、二糖組成、鎖長を調べる。 T細胞で特異的にEXTL3を欠損させたコンディショナルノックアウトマウスに関しては、引き続き、FACSを利用して脾臓を用いたT細胞の分化・成熟の度合いを調べていく。また、血球を採取し、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸の構造を解析し、ヘテロあるいは野生型の同腹子と比較する。 EXTL3変異患者由来の細胞に関しては、さらに詳細に各グリコサミノグリカン鎖の構造を調べる。特に鎖長の変化を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に開催予定であった薬学会に参加予定であったが、新型コロナウイルスのために中止となり、その分の旅費、宿泊費が使用できず、次年度に繰越となった。研究に必要な試薬、培養用器具など、消耗品の購入に充てる予定である。
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