研究課題/領域番号 |
18K06672
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
齊藤 洋平 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (90411032)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱ストレス / Stat3 / 温熱耐性 / Hsp |
研究実績の概要 |
ストレス応答は熱ショックタンパク質 Hspの発現を介して細胞の恒常性維持に寄与する。一方、癌細胞においては温熱や薬剤に対して抵抗性を引き起こし治療の妨げとなる。これまでにHsp発現メカニズムの一つとしてStat3の関与を報告してきた。Stat3は固形癌をはじめ多くの癌で活性化し、転移をはじめとする癌悪性化を引き起こすが、熱ストレス時におけるStat3活性化と癌悪性化の関連は明らかでない。本年度は主に以下の結果を得た。
(1) ヒト子宮頸部癌由来HeLa細胞を42℃処理すると、Stat3のTyr705が0.5-1時間をピークに一過性にリン酸されることを抗リン酸化Stat3(Tyr705)抗体を用いたウエスタンブロット解析により明らかにした。この42℃処理によるStat3リン酸化はStat3リン酸化阻害剤であるAG490やStattic処理により抑制された。(2) Stat3阻害剤AG490およびStatticを用いた検討により、熱ストレスによるStat3リン酸化が、HeLa細胞の温熱耐性化に必要であること、Hsp105, Hsp70, Hsp27の発現誘導を引き起こすことを明らかにした。Hsp105の温熱耐性獲得への寄与をHsp105ノックダウン細胞を用いて明らかにした。(3) 熱ストレスによりStat3はTyr705だけでなくSer727もリン酸化されたが、他のStatファミリータンパク質やJAKチロシンキナーゼのリン酸化は観察されなかった。熱ストレスによるStat3活性化はリガンド依存的な経路と異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱ストレスによるStat3活性化がHspの発現を介して、がん細胞の温熱耐性化に寄与することを明らかにし、論文として報告した。
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今後の研究の推進方策 |
Hsp発現を介した温熱耐性化以外の熱ストレスによるStat3活性化の生理的意義として、 (1) Stat3標的遺伝子を介したEMT亢進、(2) VEGF発現を介した血管新生を想定している。次年度以降は、これらについて検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用予定の物品を購入できていたことならびに一部の研究進捗状況の遅れにより、次年度使用額214,290円が生じた。次年度に実施予定のリアルタイムPCR試薬、抗体、siRNA、発現プラスミドなどの購入費にあてる。
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