研究実績の概要 |
味覚機能において『亜鉛 Zn』は味細胞の分化・増殖に必須の分子であることが示されているものの、味蕾において、亜鉛が味覚情報伝達に関与するか否かは不明である。 本研究では、亜鉛の味覚情報伝達への関与を精査するため、亜鉛バイオセンサーを用いて味刺激に対する味細胞からの亜鉛放出性の検討を行う。さらに、亜鉛トランスポーターの発現局在についても解析する。 本年度は、まず、味細胞の単離法に関して検討を行い、酵素カクテルを用いて至適温度および時間をプレリミナリーな検討によって、味細胞の単離条件を決定した上で、味細胞からの亜鉛放出性について検討を行った。その結果、味細胞存在下で味刺激を与えたときの, 全hTRPA1安定発現細胞に対する細胞内Ca2+レベルが2倍以上の上昇が認められた細胞の割合は, 18.00 ± 6.36%であった。同様の実験を100μM MgEDTAを用いて行った場合, その割合は8.05 ± 4.46%と有意に低く, これは亜鉛キレート能を有しない100μM ZnEDTAを作用させた場合 (12.68 ± 3.67%) と明らかに異なっていた。引き続き、対照実験の追加および再現性に関する検討を重ねて、検証を続けていく必要がある。 以上の実施状況に基づき、当該年度の研究は、計画に基づき順調に進めることができたと考えられる。今後、これらの成果を基に、引き続き亜鉛放出性の検討を行う予定である。
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