研究実績の概要 |
本研究では、亜鉛の味覚情報伝達への関与を精査するため、亜鉛バイオセンサーを用いて味刺激に対する味細胞からの亜鉛放出性の検討を行っている。 前年度で亜鉛を検出するバイオセンサーの機能性を確認できたため、当該年度は引き続き、味細胞からの亜鉛放出に関する検討を行った。その結果、亜鉛バイオセンサーとして機能することを確認したhTRPA1安定発現細胞を用いて, 味刺激された味細胞から亜鉛が放出されるか否かをhTRPA1安定発現細胞内Ca2+レベルを指標に調べた。その結果, 味細胞存在下で味刺激を与えたときの, 全hTRPA1安定発現細胞に対する細胞内Ca2+レベルが2倍以上の上昇が認められた細胞の割合は, 18.00 ± 6.36%であった。 これまでに我々は, ラット有郭乳頭の味細胞における亜鉛の局在を亜鉛特異的蛍光指示薬ZnAF-2 DAを用いて示し, また, 味覚情報伝達に関わるII型及びIII型味細胞にZnT3が発現することを明らかにしている。さらに本検討により, II型味細胞を活性化させる味刺激によって味細胞から亜鉛が放出されることが示唆された。したがって, II型味細胞において, ZnT3により構成される小胞内に蓄積された亜鉛が味刺激により細胞外に放出されている可能性が考えられる。 当該年度の研究は、コロナ禍で若干計画よりは遅れているものの進めることができた。今後は、細胞外亜鉛キレート剤を用いた検討などを予定しており、味刺激による味細胞からの亜鉛放出性に関して引き続き検討を行う予定である。
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