研究課題/領域番号 |
18K06677
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
阿部 充宏 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (90415068)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スフィンゴミエリン / フリップフロップ / 脂質ラフト / 細胞膜 / シャルコー・マリー・トゥース病 |
研究実績の概要 |
これまで、スフィンゴミエリン(以下,SM)が細胞膜外層から細胞膜内層にフリップするために必要な因子を探索し、得られた候補因子中から、1つを絞り込み解析を行ってきた。免疫電顕によりこの因子の過剰発現株では細胞膜外層のSMが少なくなっていること、in vitroの結合実験によりこの因子はPIP2に特異的に結合することがわかった。また、この因子は人工膜のtubule化を引き起こすこと、人工膜の脂質に対してフリップ活性を持つことがわかった。 今年度は、まず生化学的な脂質の解析を行った。その結果、過剰発現株において、SMの量・鎖長とも変化は見られなかった。免疫電顕の結果を考え合わせると、SMは細胞膜外層では減少し、細胞膜内層では増加していることが予想された。そこで、全反射顕微鏡によって細胞膜外層のSMと細胞膜内層のSMを観察した結果、予想される結果と一致した。この因子の細胞内局在を調べた結果、細胞質に多く局在したが、細胞膜にも一過的に局在していた。細胞内でPIP2の量を減少した細胞では、この細胞膜への局在は抑制されることがわかった。 得られた因子はシャルコー・マリー・トゥース病の原因遺伝子の1つである。シャルコー・マリー・トゥース病の変異をこの因子に導入し、生化学的な解析を行った。in vitroでPIP2の結合能を調べた結果、シャルコー・マリー・トゥース病の変異型タンパク質は、野生型に比べてPIP2の結合能が高くなっていた。表面プラズモン共鳴によって結合能を定量した結果、Kdが低下していた。また、人工膜のtubule化・スフィンゴミエリンのフリップをin vitroで調べた結果、野生型に比べて上昇していることがわかった。これらの結果から、シャルコー・マリー・トゥース病の変異はgain-of-functionの変異であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の前半は新型コロナウイルス感染症対策のため、研究機関の立ち入り制限があったが、後半は遅れを取り戻すように努力した。
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今後の研究の推進方策 |
フランスの状況次第ではあるが、フリーズフラクチャー電子顕微鏡解析を行うことにより、シャルコー・マリー・トゥース病の変異型タンパク質を発現した細胞における表現型を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスのため、研究機関の閉鎖により、実験が遅れた。
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