研究実績の概要 |
本研究は、単一細胞単位でヒストンエピゲノム修飾の定性・定量解析が可能で、汎用性と再現性に優れる新しい手法(scChIC-Seq法)を開発するとともに、本法を用いてゲノム編集後のゲノム情報の変化を検知し、ゲノム編集の生体へ及ぼす影響について解析することを目的とした。今年度は、我々が報告したscChIC-Seq法(Nature Methods, 16, 323-325, 2019; Protocol Exchange, doi:10.1038/protex.2019.011)について、様々な種類の細胞へも適用可能になるようプロトコルの改良を行った。マウスの胎児皮膚細胞(NIH3T3)、マウスリンパ腫・Tリンパ球様細胞(EL4)、マウス胚性幹細胞(MES)、マウスT細胞(T cell)の4種類の細胞を用いて、ヒストン活性化修飾であるH3K4me3に関する網羅的解析を試み、得られた結果の統計解析を行った。その結果、既存の免疫沈降法と比較してNIH3T3細胞のデータの合致率は88%で、他の細胞種の合致率(34~42%)と比較して高かった。ゲノム構造の凝集率の違いによっては、scChIC-Seq法の適用性が劣る可能性が示唆された。そこで、ホルムアルデヒドを用いた細胞固定前にゲノムを界面活性剤(0.1% SDS)で処理した結果、解析精度の改善が有意に見られた。以上の結果を踏まえ、界面活性剤処理を行うことで、様々な細胞種へのscChIC-Seq法の適用性が高まることが示唆された。本研究結果で開発した改良型scChIC-Seq法をゲノム編集細胞へ適用させヒストンメチル化の変化を野生型細胞と比較解析することを試みたが、研究資金不足で途中断念せざるを得なかった。
|