研究課題/領域番号 |
18K06684
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
新谷 紀人 大阪大学, 薬学研究科, 准教授 (10335367)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 精巣 / 白色脂肪 / 心臓 / 膵臓 / 遺伝子改変動物 |
研究実績の概要 |
高齢化社会の到来に伴い、代謝性疾患や神経変性疾患など、慢性炎症性疾患に対する新規治療法開発が喫緊の課題となっている。代表者らは最近、分子量13 kDaの新規ミトコンドリア因子(p13)が、脳と膵臓において同疾患の新規創薬標的となる可能性を見出している。本研究では、p13について得た知見を、臨床を視野にいれた、より具体的な創薬/育薬研究に展開する目的で実施しており、2019年度は特に、p13の遺伝子欠損(KO)マウスを用いた研究に注力し、以下の知見を得た。 1) KOマウスは生後48時間以内に半数以上が死亡するが、この期間内において哺乳状況には著しい異常を認めない一方で、本マウスは出産当日の時点において既に有意な低体重・低血糖を示すことを見出した。よって、このような代謝異常が本マウスの高い致死性の一因となっている可能性が示された。 2) 成体のKOマウスでは、精巣では成熟した精子が全く認められず、明らかな組織形成異常が生じていた。また白色脂肪組織でも、組織重量の減少に加え、脂肪細胞ならびに脂肪滴のサイズの著明な減少を認めた。また脳についても若干の重量減を認めた。 3) また心臓においては、脂質代謝やアポトーシス制御因子のmRNA発現が選択的かつ有意に変化していたが、著明な組織学的変化は認められなかった。 4) さらに膵臓については、p13の発現が知られている膵ランゲルハンス氏島のサイズが、有意ではないものの減少傾向にあることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は特にp13ホモ欠損マウスの繁殖率を改善すべく、その致死性の原因究明を試みた。その結果、同マウスの糖代謝異常が高致死率の一因になっていることを示すことができたものの、それを踏まえた繁殖率の改善策(保育時の里親の追加など)は成功しておらず、主としてサンプル調整の障害により、研究は若干遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度として、精巣と脂肪の表現型異常に立脚した創薬展開の意義を、in vitro実験系も加えることで多角的に検証する。なお実験動物を用いた検討では、サンプル調整の障害が影響されない、「出生直後」に限った検討をするなど、若干の計画変更も視野に入れて進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子欠損マウスが示す生後早期の高い致死性が原因となって、本研究の様々な実験に用いるためのマウス供給を十分に行うことができず、結果として十二分の研究が実施できなかったため次年度使用額が生じた。次年度はマウス供給が障害されない「生後直後のマウス」を用いた研究を進めていく。
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