研究課題/領域番号 |
18K06685
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
金子 雅幸 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (10322827)
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研究分担者 |
高田 修治 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, システム発生・再生医学研究部, 部長 (20382856)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | RNF182 / mTORC1 / 神経分化 / ライソゾーム / LAPTM / LAT1 / TFEB / ビオチンリガーゼ |
研究実績の概要 |
本研究課題では、神経分化時に発現が増加するユビキチンリガーゼRNF182がmTORC1シグナル調節に関与することから、その分子機構を明らかにし、神経の分化におけるRNF182の役割を解明することを目的にしている。今年度は以下のことを明らかにした。 1)LAPTMがLAT1以外にどのようなトランスポーターを輸送するか明らかにするため、近位ビオチン標識法を用いた。LAPTM4AとビオチンリガーゼであるBirAを融合し、質量分析によりLAPTM4Aの近傍タンパク質を同定した結果、LAT1以外にもアミノ酸トランスポーターや浸透圧調節に働くトランスポーターを同定した。これらとmTORC1との関連性が報告されていることから、今後はLAT1とともに関係性を明らかにしていく。 2)RNF182はライソゾームのpHを上昇させるクロロキンやバフィロマイシンによって発現が誘導されるが、それ以外の機序でmTORC1の活性を阻害する薬物を用いてRNF182の誘導を検討した。その結果、いずれの薬物でもRNF182の発現は誘導されなかった。また、ライソゾームストレス応答転写因子TFEBとそのファミリーであるTFE3のmiRをテトラサイクリンによって誘導する細胞を作成し、ライソゾームストレスに対するRNF182の遺伝子誘導を解析した。その結果、TFEBとTFE3のノックダウンによる発現抑制はRNF182の発現誘導には影響しなかった。以上のことから、RNF183の発現誘導は、従来のmTOC1やTFEB/TFE3を介さない機構によって誘導されている可能性が示唆された。 3)RNF182のノックアウトマウスを作成したが、正常に誕生し、その後も明らかな異常は認められなかった。さらに、LAPTM4Aとのダブルノックアウトマウスも作成したが、やはり異常は認められていない。今後は、RNF182のノックインマウスを作成して、RNF182の発現部位を明らかにして、その領域を重点的に解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実験の多くが予定通りに進行しており、当初の予想とは異なる結果も出ている。図書の予定より踏み込んだ実験もおこなっており、当初の計画以上に進行していると言える。1)の研究結果は当初の予定にはなかったが、LAT1以外のトランスポーターがmTORC1の活性化に関与する可能性が考えられ、発展性のある結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度までの結果をさらに確実なものにするための実験を重ねて、論文投稿を目指す。また、ノックインの実験は当初の予定を変更して、蛍光タンパク質tdTomatoとビオチンリガーゼBioID2を同時に発現するシステムに変更した。tdTomatoとBioID-3×FLAG-RNF182との間をT2A配列でタンデムにつなぐことで、tdTomatoとBioID-3×FLAG-RNF182を別々に発現させるドナーベクターを構築する。この方法により組織抽出物から直接RNF182の近傍タンパク質をpull downし、質量分析を行うだけでなく、tdTomatoの蛍光を用いてBioID-3×FLAG-RNF182を発現した細胞をセルソーターで分離することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたノックインマウスの作成が、異なる方法で行うことになったため、予備検討も含めて必要な経費を次年度に繰り越すことになった。令和2年度において、繰り越した予算を用いてノックインマウスを作製する。
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